「ふぞろい」の妙
均質的な姿形のものが規則正しく整然と並んでいる様子は美しいものですが、不定形で不規則なものが描き出す美もあります。
工業的に生産された無機質なものが大量に溢れた世の中だからでしょうか。 最近はうつわなどを見ていても、手仕事の作品など、計算ではつくり出せない情緒的な姿形を持つものに、やたらと心惹かれます。
そんな私の嗜好にグサッと刺さったのがこのタイル。
いびつな四角形、でこぼこした表面、色彩のムラ、ところどころが欠けた縁。全然きっちりかっちりしていない、粗雑で簡素なつくり。でも、そこが良い。
不揃いな表情が放つゆる〜い雰囲気がリラックスした心持ちにさせてくれる、なんとも素朴な味わいを持つタイルです。
素朴な顔して多芸多才
カラー展開は6色。北欧系やフレンチ系などのヨーロピアンテイストに合わせるのも良いですが、落ち着いたカラーリングは和テイストにも合うと思います。
漆喰や珪藻土、塗装、木など、有機的な表情を持つ素材との相性は抜群。特にリノベーションでは、古さのためにもともとの空間が多少の歪みや不揃いさを持っていることがあり、そんな場面にもそのルーズさを活かしてフィットしてくれそうです。あえてシャープな空間に合わせて、ちょっと力の抜けた感じを演出してみるのも良いかもしれません。
部分的に使ってアクセントにしても良いし、一枚ずつ表情が異なるので、広い面に単色使いしても単調になりません。複数の色をミックスしてモザイク貼りにしてみるのも良いでしょう。
壁以外にも、テーブルの天板や棚板に貼るなど、家具のアレンジに用いるのもアリかもしれません。
「ヘタウマ」感を楽しみたい
こちらのタイルは裏にネットが張られたシート状ではなく、バラバラの状態になっています。自分で貼るのは大変そう……と思われるかもしれませんが、実はDIY向き。
アンティーク感を重視して、もともと不揃いな形に作られているため、貼ったときに少々並びが歪んでいても、かえってそれが味になるんです。
また、タイルとタイルの間に目地材を入れない、「目地なし貼り」をすると、不揃い感がより一層引き立ちます。
目地を入れないことで、タイル裏面への浸水や、熱や地震による割れや浮きが起こる可能性が高くなるので、こうしたリスクが心配される場所や場面では「目地なし貼り」はおすすめできませんが、とにかくざっくりとした仕上げ方がよく似合う、大らかなタイルです。
選ぶ色、貼り方の工夫で、この素朴なタイルが秘めた多彩な魅力を引き出してみてください。