ずっしり、存在感
手にとってみると、期待を裏切らない金属のずっしりとした「かたまり感」。だけど、ただ無骨じゃない、品のあるフォルム。
どこかで見たような、記憶の底にあるけれど、手にしたことはない。身の回りにはいないタイプの把手だなと感じました。
無駄なく、ミニマルに、シンプルにと設計されたキッチンが主流なこのご時世。把手はあくまでさりげなく、目立たないように身を潜める傾向にあるのかもしれません。
そんな中で「いかにも、把手です」と主張してくる、ちょっと大袈裟にも思える存在感が、新鮮に感じたのです。
天板の素材や扉の色、壁の仕上げ……キッチンの印象を決めるのは、大きな面を占めるものとは限りません。
そこに添える把手にまで気を配ってみると、キッチンを設える楽しみが広がるのでは?
そんなことを思わせてくれる『鋳物キッチン把手』です。
イギリスのキッチンから
この把手がつくられているのは、数世紀に渡ってイギリスの工業を支えてきた工業地域、ミッドランズの中心部にある家族経営の小さな会社です。
100年前から変わらないパターンと鋳造方法でつくられているパーツは、クラシックスタイルのキッチンや、アンティーク家具の修復に使われてきました。
使う人や、置かれる場所への配慮が感じられるその形状は、キッチンを人が集まる、コミュニケーションの中心の場として考えるイギリスならでは。
品質の均一化を図る工業製品、手仕事の味わいを活かした仕上げなど、素晴らしい選択肢が数多くある金物の分野。その中でも、長い間廃れることなく、日常の景色を彩ってきた存在は、この先もずっと残って欲しいと思える普遍的な美しさがあります。
扉を引き立て、空間の質を上げる
イギリスのキッチン把手として日本でよく見かけるものは、アンティーク風の加工がしてあったり、デコラティブなものだったり。そのままでは、今の暮らしに取り入れにくいことも。
この『鋳物キッチン把手』は、伝統的な形を引き継ぎながら、現代の内装にも合わせやすい洗練された仕上げのものをセレクトしています。
ラインナップは、それぞれに違った趣のある3種類。
「鋳鉄」は、表面に凹凸のある表情と、鋳物ならではの重厚感が魅力。ラッカー塗装で、インダストリアルすぎない品を感じる仕上がりに。
サテン仕上げの「真鍮」は、無垢の真鍮の白っぽい色味が特徴。素地なので、使ううちに光沢が薄れ、落ち着いた表情に変化するのも魅力です。
手作業で滑らかに磨いた後に、ニッケルメッキを施した「クローム」は、車や船舶などで使われる、工業製品を思わせる佇まい。
塗装扉や框扉、無垢材を使ったキャビネットと合わせれば、空間全体がグッと上質な雰囲気に。古さを活かした少しレトロなキッチンや、古材などにもよく似合います。
伝統に潜むポテンシャル
流行に媚びない、把手としての純粋な形。空間づくりのパーツとして捉え、フラットな目線でみてみると「実はこんな組み合わせもありか?」と可能性を感じてしまいます。
中でも着目したのは「クローム」のキラリと光る存在感。
ラワンをはじめとした落ち着いた色味の木のアクセントに。躯体むき出しの壁にモルタルカウンターなど、無機質な素材を合わせて、その存在感を引き立たせてみたり、タイルで色味や質感を加えてみたり。
これまでとはひと味違うキッチンとの出会いを予感させてくれます。
キッチン本体だけでなく、カップボードの扉や、パントリーにもお揃いで並べてみれば、空間全体で雰囲気をつくり込んでいくことも。
クラシックに偏りすぎないイギリスの定番品で、キッチンに新鮮な景色を生み出してみてはいかがでしょう。