天井仕上げ、その選択肢
床材が“フローリング”ならば、天井材は“シーリング”。
なんて、言い切ってみました。
ちょっと違和感ありますでしょうか?それもそのはず、天井仕上げはクロスや塗装が一般的。受ける制約が多いからか、フローリングのように「こだわって選ぶもの」として定着していない分野なんだろうと思います。
ただ、改めて考えてみると、直に肌に触れることはなくとも、いつも視界に入る場所。家具が置かれない分、空間に与える影響は家の中で一番大きいと言っても過言ではないはず。木肌の美しさや力強さ、木が持っている視覚的な魅力は、天井でこそ最大化されるのかもしれません。
住宅でも安心して取り入れられて、質感よく、居心地をあげてくれる木の天井材。見つからないのでつくってみました。天井仕上げの選択肢を広げる『ウッドシーリング』です。
住宅用に再定義
最近では、住宅の事例でもよく見かけるようになった木の天井材ですが、その多くが商業施設用としてつくられてきたものでした。
そんな背景もあってか、古材風の加工がされていたり、極端に木目の濃淡や凹凸を強調する仕上げになっていたり。その装飾性が、住空間においては少し過剰に感じてしまいます。
杉やヒノキ、パイン材といった、木目がはっきりとした樹種を使った、山小屋みたいなウッディな雰囲気も今の気分と違う……。
そこで「ウッドシーリング」は、お部屋のイメージに合わせて選びやすい3つの樹種でご用意しました。
明るい白木で木目のあっさりとした「バーチ」。木目や節などの表情が適度に楽しめる「オーク」。
ガツンと木目の主張と深みのある色合いの「ウォルナット」はしっかり重厚感を出したい時に。
空間を組み立てていく中で、素材として入れ込みやすいように、どの樹種もグレードを選別しすぎず、天然木そのままの見た目を残しています。
天然木、天井で使うには……
この「ウッドシーリング」、表面の見た目を裏切る、薄さと軽さ。手にしてみると、そのギャップに若干驚きます。
床とは違い、制約が多い天井材だからこそ、この形になっているんです。
例えば、加熱機器を使うキッチンでは、不燃材の使用を求められることがありますが、そんな場面でも取り入れてもらえるよう、不燃性の下地に0.2mmの突板を組み合わせています。
表面には本物の木を使っているので、触れてみるとしっかりと木の感触。特に不燃処理がされたものは、表面の塗装によってツルっとした見た目になってしまうこともあるのですが、プリントでは表現できない本物の木の質感にこだわりました。
また、軽量で、個体差が少ないなど、施工性の良さも大切にしたポイント。木材の収縮により、反ってしまうリスクも少ないため、天井面にも安心して使っていただけます。
一枚あたりのサイズは幅145mm×長さ1820mmの定尺で、石膏ボードにカットせずに貼っていくことができます。
貼り上がり、自然に見えるわけ
もうひとつ、開発時に頭を悩ませたのが貼り上がった時の自然な見栄え。
特に、「バーチ」や「オーク」は、木目の主張が少ないこともあってか、広い面で並べた時に目立つ、単調でのっぺりした感じがどうにも気になっていました。
一枚一枚こだわった天然木の質感を引き立てるために取り入れたのが、角をわずかに落とす糸面取り。3種の樹種全てにこの加工を施しています。歩行の際の引っ掛かりを無くすため、フローリングではよく用いられる加工ですが、直接触れることのない天井材では、そもそもその必要がなく、面取りをする発想自体がないものでした。
表面から1mm角を落とすことで生まれる溝が重なることで、空間に伸びやかな印象を与えてくれます。
「良い木天井」考察
木を天井に使えば、「良い」木天井が手に入るのかというと、そうはいかないのが木天井の奥深いところ。天然木そのものの質感を追求した「ウッドシーリング」。どんな風に使うのが「良い木天井」への近道なのか?商品開発の最後に考えてみました。
床は木だけじゃない!天井が木なら、床は異素材に目を向けてみる
木と木を同じ空間で合わせるのって、実はとっても高度なワザ!床には木と決めつけず、他の素材にも目を向けてみる。それが「良い木天井」をつくるコツ。
とにかく床との距離を取る。あるいは角度をつけてみる
それでもやっぱり、床には木を使いたいという方に。その場合、吹き抜けまでは難しいとしても、できるだけ天井高を上げて、床との距離をとりたいところ。勾配天井など、角度をつけてみるのもひとつの手。
ぶつける?流す?貼り方で全く違った印象に
選ぶのは樹種だけではありません。壁面と垂直にぶつけるのか?平行に流すのか?りゃんこ貼り、すだれ貼り、朝鮮貼りなどなど、貼るパターンだって色々あるんです。貼り方にまでこだわって、好きな眺めを生み出そう。
その場の居心地をあげる要素として、これからは、見上げた天井にも注目です。エンジョイシーリング!