あるようでなかった存在感
仕事柄いろいろなタイプの把手をみてきました。デザインや素材別に古今東西、勝手にタイプ別把手マトリックス図をつくれそうな私ですが、「すっきりしすぎず」「目立ちすぎず」なものは意外とありません。合板や白ポリといったシンプル素材につけて把手が勝ちすぎない、そんな、あるようでなかった軽やかな存在感のある把手と出会いました。
例えば、現場でその空間に合わせてつくった、直線的でシンプルな仕上がりの収納扉。プッシュラッチにすれば「把手」はなくても成り立つ。でも、なんかちょっと欲しいような……そういう時に、これをつけることで、無機質な扉にほんの少しだけ柔らかな意思を感じるようになる。そんな雰囲気を添えてくれる『アルミの把手』です。
柔らかなカーブと陰影がポイントです
「アルミの把手」の魅力はなんといっても、光を柔らかにたたえる、その佇まい。ゆるやかにカーブした厚みのあるアルミ板。くるっと曲げた部分が手掛けになる、立体的な形状になっています。扉につけると、それなりに存在感がでるのですが、重くなりすぎないのは、アルミの軽やかな素材感ゆえ。ほどよいへアライン状の研磨仕上げと、その造形から生まれる陰影とあいまって、把手の表情を引き立てています。
表側からビス留めすればいいだけなのも気軽で嬉しいところ。キッチン扉で既存の把手を付け替えたいというような時にも、サイズ違いの既存穴を隠しつつ上から取り付けるなんてことが可能です。
横使いはもちろんのこと、縦使いの開き戸用の把手として使うのもありかもしれません。
素地かアルマイト加工か
サイズは、幅80/120/160mmの3種類。横幅の違いで、だいぶ印象が異なります。
色味はシルバーとゴールドの2種類。
シルバーは、さらにアルミの素地と、白アルマイト仕上げの2種類がありますが、混ざって届いたら判別が難しいレベルに、見た目の違いはほぼありません。
アルマイト仕上げというのは、表面に酸化被膜をつくって耐食性をアップさせる加工。例えば、洗面やキッチンなどの水回りで使う場合には、白錆を抑えてくれる白アルマイト仕上げがおすすめです。
もう一つが、あまり似た色味を見たことがない、落ち着いた雰囲気のゴールド。こちらは、しゅう酸アルマイトという仕上げがされています。実は、あの懐かしの黄色いヤカンなども同じ加工が施されているのですが、色のコントロールと、研磨の雰囲気によって、記憶の中のあのヤカンとは全くことなる印象。実は、アルマイト加工は日本発祥の技術なのだとか。
表からビスが見えますし、板の厚みもあるので、シャープ、エレガントとは違う。モダンというよりは、日本の町工場生まれなのにフレンチな風をまとった転校生。勝手にそんな位置づけとみております。
シナやラワン、ポリ合板などあっさりした面材たちと相性よし。使い方次第で、きれいめな空間にも、工房のようなところでも使えそう。そんな存在の「アルミの把手」どこかで使えないかなと常に頭の片隅においていただきつつ、よきタイミングで相性のよい取り付け場所と出会えると嬉しいです。