水平のラインが美しいダイニング・キッチン。白いカウンターの奥にはキッチンが隠れています。

キッチン空間の新しい解決案

「あ、きれい……」

リビングと一体になったキッチンスペースに入った瞬間、すっきりした天井と、間接照明のやわらかい光のラインが奥まで続いていくのが目に飛び込んできました。

手元を隠したカウンターキッチン。キッチンの上にはスクエアに切り取られたスリットが見えるだけ。そこに、もくもくと料理中の煙が吸い込まれていきます。

キッチンから続くリビング空間。玄関から入ると、この光景が目に飛び込んできます。

「もしや、これ、レンジフード代わり???こんなこと出来るの?」

訪問したのは、建築家が設計した戸建て住居。この家では、レンジフードをつけない代わりに、天井に換気扇が埋め込まれていて、それを覆うためのスリット入りのカバーが設置されていたんです。

お料理大好きなお施主さん。この日はカレー用にと大量の玉ネギを炒めるところを見せてくれました。

(※スリットの奥の金物は、商品化したものでは見えなくなります)

レンジフードがないと、キッチンの設備っぽい要素が見えてこない。天井のあり方で、空間の一体感がこんなにも増すんだ。そんな気づきを与えてくれたのが、上空すっきりのキッチン空間を叶えてくれる『天井スリットファン』との出会いでした。

広がりを求めて生まれた、レンジフードがない世界

当たり前につけなきゃいけないと思っていたレンジフードですが、建築士が必要な換気量の計算をして、確認申請で認められれば、必ずしもキッチン上につけなくてもいいんです。ただ、レンジフードをつけないと、料理中の油の混じった煙が一時的にでも部屋中に拡散していってしまうので、それは何とかしたい。

そんな建築家の悩める設計プロセスから生み出されたのが、換気扇をレンジフード代わりに天井に埋め込み、料理中の煙は吸いつつ、天井はすっきり広く見せるというアイデアでした。

実はこれ、2022年秋に募集した、建築家が誰かのためにデザインしたアイデアを商品化しようという「SPIN-OFFプロジェクト」に応募いただいたもの。

大阪を拠点に活動する建築事務所のHoribe Associates(以下、ホリベアソシエイツ)が10件以上の現場で試行錯誤しながら造作してきたアイデア。特に天井高さを抑えた対面キッチンを計画する際に有効で、このアイデアがあったからこその気持ちのいいキッチン空間を実現してきました。

「はつが野の家」写真提供:ホリベアソシエイツ 撮影:市川かおり

「鴨島の家」写真提供:ホリベアソシエイツ 撮影:市川かおり

誰もが使えるプロダクト化に向けて

ホリベアソシエイツとtoolboxによる「天井スリットファン」商品化に向けた共同開発は、レンジフードに比べ多少性能が落ちても、キッチン空間の設計の可能性が広げられるはず!
都度現場で造作するものと比べて、価格的なメリットがあり、ディテールも細かく追い込まれたものであること。煙補集試験を行うことで機能性が検証済みであることも安心に繋がるはず。
そんな思いで、進めてきました。

煙の捕集試験をした時の様子。左から商品開発担当の椎野、ホリベアソシエイツの堀部圭一さんと直子さん。

スリットで囲まれた天井のスクエアの部分は、540mm角。換気扇を天井に埋め込み、換気扇カバーと点検口が付いたケースを整流板で覆い、天井とフラットに納めるつくりです。

なるべくコンパクトな仕上がり寸法を実現すべく、点検口はダクトの接続ができるギリギリのサイズに。見上げた時にスリットから取付ラッチ金物が見えないよう、それでいて、蓋を外す際の指掛かりを考慮して、幅20mmというスリット寸法が決まっていきました。

スチールを曲げ加工した整流板は工具無しで取り外し可能。メッシュの換気扇カバーと配管を取り付ける点検口が見えます。

天井の仕上げに合わせて、整流板は2種類から選択していただけます。ちなみに、スイッチは電気工事をしてお手元の都合のいいところに取り付けてもらう形になります。換気扇は強弱の設定もできるので、お好きなスイッチをご用意ください。

白い天井には、「整流板ホワイトタイプ」を。N90の半艷な仕上げ。

周辺の天井材と同じ材を貼ってフラットに納めたい時には、 「整流板仕上げタイプ」を。

 

実際の使い勝手やお手入れ事情も聞きました

すっきり天井のキッチン空間が実現できそうなことは何となく伝わったとしても、実際の吸い込み力やお手入れはどうなの?というのが、一番気になるところですよね。

ホリベアソシエイツ設計のもと、このアイデアをご自宅で採用し、5年以上住まわれたお料理好きのお家2軒に取材に行かせてもらいました。気になる住まい手目線の使い勝手、お手入れ事情レポートは、下記コラムをご覧ください。
ガスとIHそれぞれで、ほぼ毎日お料理する方たち。汚れの付き具合や高いところに登ってのお手入れの様子を見せてもらったり、清掃時の不便さを感じるよりも、日々のすっきり具合に満足しているという声を聞かせてもらいました。

実際どうなの?「天井スリットファン」5年目の使用感とお手入れ事情を徹底レポート
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天井にすっきりと納められた埋め込み型・整流板付き換気扇「天井スリットファン」のあるキッチン空間で暮らすファミリーを2軒訪問。毎日の使い勝手から天井汚れない?掃除頻度は?など気になるあれこれを取材してきました。

また、開発パートナーであるホリベアソシエイツのお二人との商品化までの道のりをコラムにまとめています。設計者ゆえの細いこだわり、実際どれくらい吸い込むかの煙捕集の試験を行った動画も載せていますので、こちらも合わせてどうぞ。

レンジフードが消えた?キッチン空間の可能性を広げる換気扇アイデア。建築家夫婦と取り組んだ商品化への道のり
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「天井スリットファン」は、キッチンのレンジフードで視線をさえぎりたくないという設計中の思いから生まれた換気扇を使った空間解決のアイデア。建築家がデザインした造作アイテムを商品化する「SPIN-OFFプロジェクト」第1号となりました。設計のHoribe Associates(以下、ホリベアソシエイツ)のご夫婦に、商品化への道のり、思いを聞きました。

「家具のように、リビングと一体に存在するキッチンをつくりたい」「とにかくすっきりした空間を実現したい」と思っている人にとっては、すごく夢が広がるこの商品。ただし、レンジフードをつけない代わりに「天井スリットファン」を使うのは建築士に設計をお願いし、確認申請も必要になるので、特殊解であるということは知っておいてください。

ただ、それらを加味してでも、この埋込み型で叶うすっきり空間を手に入れたい!お手入れも許容範囲!という方はぜひご検討ください。私たちも、このアイデアがあることで生まれた、気持ちのよいキッチン空間ができていくことを、楽しみにしています。

天井スリットファンの全3商品

担当:椎野 / テキスト:来生
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