パーツで雰囲気をつくり込む
気持ちの良いサニタリーをつくるものって何でしょう。例えば、白い艶ありのタイルや陶器の洗面器が清々しさを感じさせる、海外のデザインホテルのサニタリー。壁や床の仕上げ、設備機器も大きな要素だけど、タオル掛けやタオル棚、拡大鏡といったピカピカとシルバーに輝くパーツたちも、その雰囲気づくりを担っていると思うんです。そんな視点からサニタリーづくりを始めてみたくなる『ホテル金物』です。
揃える、整う
きっちりと畳まれたタオルに、整然と並んだアメニティグッズ。「整っている」ということも、ホテルのサニタリーに心地よさを感じる大きな理由だと思います。『ホテル金物』はバリエーションがあるので、パーツの素材感を統一しながら、タオルや小物を整えていくことができます。
ここにタオルを掛けて、こっちにはフックを付けてドライヤーを吊るして、拡大鏡はこの辺に……と、パーツを空間に落とし込んでいく。サニタリーは、入浴したり、髪を乾かしたり、洗顔したり、身支度をしたりと、さまざまな行動が詰まった場所。そうやって自分の使い勝手に合わせて道具の居場所を整えることも、気持ちの良いサニタリーづくりにつながると思うんです。
奥行きの違うタオル掛けを組み合わせてタオルを複数枚掛けたり、タオル棚とタオル掛けが一体になったコンビネーションタオル棚を使ったり。空間を無駄なく使える形とサイズ感もポイントです。
役割だけを壁に添える
クロームメッキの丸パイプ、それだけが壁からスッと立ち上がっている。タオル掛けとタオル棚の、そのストイックな佇まいにも惹かれました。ただ、タオルを置いたり掛けたりする機能だけがそこにある、そんな潔さを感じる理由は、取り付け座がないから。
取り付け座はパーツの個性が出やすい箇所。そこに個性を出して壁を飾り立てるのではなく、その存在ごとなくすことで壁と一体になって、自身の役割に徹しているところに好ましさを感じます。
取り付け座もなければビスも見えない、その姿を成立させるために、根本の部分には精巧な加工が施されています。この金物を製造しているメーカーでは、社内の設計部がデザインを手がけているそうで、ぼってりと厚みを感じるクロームメッキや、安定感のある太いパイプ、手の込んだつくりには、実直な姿勢を感じます。
数多のホテルを整えてきた大ベテラン
『ホテル金物』という名前の通り、これらのパーツは国内外のホテルのサニタリーで実際に使われているもの。太くずっしりしたパイプにふわふわのタオルが置かれている、あの光景が頭に浮かんできます。
つくっているのは、1954年に創業した老舗のサニタリー金物メーカー。国内製造のサニタリー金物として初めて国内のホテルに採用された歴史を持ち、1964年東京オリンピック開催に合わせて開業した日本初の高層ホテル「ホテルニューオータニ」のサニタリー金物製作も手掛けました。以来、当時のデザインを踏襲しながら現在まで製造され続けている、ホテルインテリアの定番品です。
オリンピックまでの開業を目指し、通常なら3年かかる規模の工事を1年5ヶ月で実現した伝説を持つ「ホテルニューオータニ」。当時の工法ではバスルーム一室をつくるのに1ヶ月かかっていましたが、1000室を超える客室のバスルームを短期間でつくるために開発されたのが、日本初となるユニットバスでした。そうして出来たバス・洗面・トイレ一体型の西洋式サニタリー空間で、実用性と美観を追求して生まれたのがこれらの金物たち。
取り付け座がなくビスも見せない意匠は、上質感が求められるホテルという場を意識してのこと。コンパクトな空間で活きる形状やサイズ感も、その出自を感じさせます。考え抜かれた普遍的な形と素材感、品質の良さが、時代や国を超えて、さまざまなホテルに採用され続けてきた理由だと思います。
数多のホテルのサニタリーを整えてきた金物を自分の空間に取り入れたら、気持ちもすっきり整う場所になりそうです。