気がつけばいつかの定番品
家づくりを始めるとどうしても、あまり時間や予算をかけられない場面がでてきます。だからといって何でもいいわけじゃない。「できれば良いものを!」と思っているのは依頼されているプロも、お願いしているお施主さんも一緒なのではないでしょうか。
私も内装業界にデビューした頃は、持てる限りの時間を使っていろんな分厚いカタログと睨めっこする毎日を送っていました。そうした中で先輩や職人さんに聞いて知ったり、失敗しながらも遠回りの末に見つけ出した金物や建材たちが財産のようにあります。
あたりまえ過ぎてあらためて紹介するのは今さら…と思うものでも、いつも使うパーツたちを集めたらピンチを切り抜ける助っ人になるかもしれない。そういう思いから、使いやすいパーツ類をtoolboxセレクトとして揃えることになりました。
その名も「T番」。
テーバンと読めば、toolboxの「定番」とも読める洒落の効いた言葉です。余談ですが、現場で登場する道具には洒落の効いた商品名が付けられていることも多く、現場で愛される商品になってくれたらという思いもあります。
今回はそんなT番としてセレクトした、把手シリーズをご紹介します。
懐かしさと確かな質
むかーし昔、あるところに使われていた把手たち。
この把手は戦後間もなく創業した老舗の金物メーカーが長年つくり続けてきたもの。古くから家や家具などで使われてきたその歴史も手伝って、私がいろんなカタログで巡り合ってきた把手・つまみのデザインの元ネタになっていたのかな、なんて思ったりします。
よく見かける把手の形は小さい頃から刷り込まれてきたせいか、どこかに感じる懐かしさや安心感。今回は把手2種、つまみ2種の形に対して、内装で使いやすいサイズをそれぞれ用意しました。
仕上げはシルキーなホワイトブロンズメッキ仕上げ。
ぱっと見がシルバーですが素材は無垢の真鍮製、持つとしっかり詰まっていて量感を感じます。似たような形は多くありますがエッジが立っていなかったり、中が空洞だったり、ディティールや製法はマチマチ。届いたらイマイチなんてこともあるなか、T番把手の買いやすい価格とこの質の良さも、一周回ってこれだよなあと毎回思えるポイントです。
小さな存在だからこそ
あえて気にしていないと、さらっと見過ごされてしまう把手やつまみ。
気に入っていたけど、いつのまにか廃盤になったりサイズのラインナップが減っているなんてことがあるのも事実。最近は真鍮の高騰と工場の減少で、あまり見かけなくなってきたように感じます。
そんな状況の中、製造されているサイズがちゃんと揃っているのも、このパーツが古くから選ばれてきた理由でもあります。
「あのT番の丸いやつね」とか「T番から適当なサイズで見繕っといて」、「もう時間無いからT番でいいんじゃない?」だったり…。
いつかの未来、そんな会話が生まれている事を期待して。