あかりの主体
「切れたら替える」存在だった電球。消耗品として、長らく脇役を担ってきましたが、“何万何千時間”という長寿命のLED電球が普及して十数年。今ついている電球も、気付けば長い付き合いになってきています。
いまだに消耗品の延長として扱われがちですが、よく考えてみると光そのものである電球は本来あかりの主体であるはず。長寿命が叶った今、電球は脇役ではなく主役になれる可能性を秘めています。
「ハーフマット電球」は、その可能性に挑んだLED電球。電球一つで幻想的な間接光をつくります。細かいところまで考え尽くされ、手間を惜しまずにつくられたことが伝わる、気品ある姿に惹かれました。
金環を灯す
「ハーフマット電球」がつくりだすのは、日食のようなあかりです。
丸い影から光が広がり、直視しても眩しくない。はるか遠くにあるような神秘的な光。
灯された光は内側で反射して背面を照らし、壁につければ壁に、天井につければ天井に視線が誘導されます。今ついている裸電球を変えるだけでも、これまでとは違う景色をつくってくれるはず。
光源が見えないので、寝る前の時間を過ごす寝室や夜中起きがけに使うトイレや廊下などにおすすめです。間接照明だけで過ごしたいリビングの一角など、気持ちが落ち着けるコーナーにも。
フィラメントの影も出ないため、じゅわっと広がる光だけを楽しめます。
上質な電球
ソケットと電球だけでこの間接光が実現できた理由、それは半分だけ白く塗られているこの特徴的な見た目にあります。
磁器のような透けない塗装と氷砂糖のような透け感のツートーン。
φ70とφ50のボール球という普遍的なサイズと形ですが、真っ白な陶器の器に心奪われるような、そんな上質さを感じます。
それもそのはず。それ相応の手間がかけられているのです。
前面から光が漏れず日食のような影をつくれるのは、ガラスグローブの内側にミラー塗装を施し、光を遮って背面に反射させているから。外側からもホワイトで塗装して空間によく馴染む仕上がりになっています。
それだけにとどまらず、最後の仕上げに全体を外側からマット塗装で仕上げます。なんてことないように感じるのですが、この一手間によって、反射した光をやわらかに広げているんです。
そして消灯時も、ツヤのある電球よりもインテリアや壁の仕上げなどと馴染みがよく、電球というよりオブジェのように見えてくるから不思議です。
そっけないソケットが出る幕
電球単体で存在感があるので、合わせるソケットは、存在感も価格帯も控えめな『フラットレセップ』や『モデストレセップ』がちょうど良いと思います。
「ハーフマット電球」がいるときは、ソケットは脇役に徹して大丈夫。電球に身を委ねてしまいましょう。
もちろん電球なので、ペンダントライトやスタンドライトにも合わせられます。そんな時もそっけないくらいのソケットを選んでみるのがおすすめです。
LED電球の進化があってこそ生まれたこのあかり。その進化を生かした丁寧なものづくりに畏敬の念を抱かずにはいられません。