今回ご紹介するのは、築40年超えの団地をリノベーションしたお住まい。建物は壁式構造で、住戸の中には壊せない構造壁があり、空間が分断されたつくりでした。そこで設計者が提案したのが、住戸の中央に「パティオ」をつくって、各空間をつなぐアイデア。

「パティオ」とは、スペイン語で中庭や裏庭のこと。この住戸は玄関を入ると左右に空間が分かれる間取りになっており、その真ん中に位置するキッチン・廊下・洗面脱衣所ゾーンの床に無釉タイルを敷き詰め、半屋外的な雰囲気を感じる空間にしました。

玄関土間を上がると、タイル貼りのパティオがリビングダイニングへと続いていきます。空間をつなぐ開口はアーチ型にして、壊せない構造壁を空間を分断するものから、場を切り替える印象的な境界にしています。

キッチンは、黒い人造大理石の天板と、面材に白い羽目板を使って造作。プランニングの際、内装のコンセプトにしたのは「シャビーシック」だったそう。人工大理石が持つ上質感と、塗装仕上げの羽目板と無釉タイルの素朴な素材感をミックスして、気取りすぎない雰囲気をつくり出しました。

キッチン本体の真上ではなく、スペースの真ん中にペンダントライトを連灯使いしているのもポイントで、キッチンにひとつの場としての存在感をもたらしています。

パティオの天井には、飾り気のなさが持ち味の『工業系レセップ』をお使いいただきました。

タイル床のパティオとひと続きになっている開放的な洗面脱衣所は、閉じたい時はどうするのかというと……

板壁のように見えていた部分が、大きな引き戸になっていました。閉じる必要がある時以外は洗面脱衣所をオープンにしておけるのは、いいですね。普通サイズの出入り口にした場合と比べて、閉じている時も空間に伸びやかさを感じます。

キッチンとリビングダイニングの間にある構造壁は、モルタル仕上げに。白でまとめた空間の中、ここだけ仕上げを変えることで、壊せない壁を意匠のアクセントとして活かしています。

アーチ型の開口の向こう、パティオを渡った先には、玄関と寝室が2室、書斎があります。

スペインでは、パティオは屋外の居間になったり、そこで食事をとったりと、家族の交流の場として使われているのだそう。この家でのパティオは機能としては廊下ですが、家族が行き来し、家全体を見渡せる場所として、大事な役割を果たしています。

以前の住まいは新築で買った分譲マンションで、普通の内装が好きになれず、「好みのインテリア空間に住みたい!」という奥様の希望で、住み替えを機にリノベーションしたというお施主様ご家族。とある雑誌のインテリア連載が好きで、その連載に載るという夢があった奥様は、それをモチベーションにして家づくりに取り組み、マイホームの完成後、その夢は見事実現したそう。自分の好みを映し出した、愛着を感じる家をつくれたことが伺い知れるエピソードですね。

お気に入りの空間を一望しながら暮らす。見晴らしの良い家での日々は、満ち足りた気持ちで過ごせそうです。

※こちらの事例はimageboxでも詳細をご確認いただけます。

ANCHOR DESIGN

東京都調布市を拠点として活動している、星野晃範が主宰する設計事務所。建築設計、リノベーション、インテリアデザイン​等を手掛けています。

紹介している商品

LT-BR001-01-G141
¥2,800
テキスト:サトウ

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