県産の栗材を、床はもちろん、階段や手摺り、備え付けの家具に至るまで、ふんだんに使用したこちらのお住まい。栗材特有の力強い木目が空間全体を包み込み、自然素材ならではの温かみを感じさせてくれます。
そんな木の魅力がたっぷり詰まった素敵な空間に、木のつまみ&ドアパーツを取り入れていただきました。
栗材が主役のこのお家。「とことん木を主役にするために、ドアノブや把手も木製のパーツにしたくて」とは、コマド意匠設計室の柳原さん。
そんな中で出会ったのが、この『木のつまみ』だったそう。
「シンプルで潔いフォルムがいいなと思って」そう、採用に至った理由を教えてくださいました。
また、私がこの空間をみて「素敵だな」と感じたのは、建具の枠や巾木などの装飾的な要素を取り払った、細部の納まりへのこだわり。余計なノイズがない分、素材の切り替えが美しく際立ち、「木」の豊かな表情が生かされています。
極力装飾を控えシンプルに仕立てる手法は、リビング側も同様。白の箱の中に、木の素材感がふわりと漂います。
もうひとつ、こちらのリビングの特徴は、天井照明を設けず、壁面に取り付けたソケットとスタンド照明だけで灯りを取るスタイルをとっていること。日中は自然光が豊かに広がり、夜はともる灯りが静かに空間を包み込む。昼と夜とで異なる表情をみせてくれる空間です。
ダイニングの奥にある扉を開けると現れるのは、木製の手摺りがやさしく迎えてくれる階段。もちろんこちらも栗材でつくられたもの。
建具の枠を設けないことで、床が途切れることなく、ひとつながりに続いていくような開放感が生まれています。
洗面やトイレ、その他の空間もリビングダイニングと同じく、余計な装飾を削ぎ落としたプレーンなスタイルが貫かれています。
真っ白な空間にそっと浮かびあがる『木のドアパーツ』。空間に温かみを添えるアクセントとなり、シンプルな美しさの中に、ほっとするような温もりを感じさせてくれます。
素材の質感が引き立つことで、控えめな空間の中に自然と上質さが漂います。
そして、もう一つ。ぜひ注目してほしい推しポイントが外壁に。玄関扉にぐいっと寄ってみると…
このかわいい木製の表札!
こちらの表札ですが、toolboxの商品ではなく、このおうちのために現場で製作されたオリジナルのもの。雨水がたまらないよう、水捌けを考慮して上部に角度をつけたことで、偶然にも内部で使われている「木のつまみ」とデザインが酷似する納まりになったそう。さりげなく玄関扉に寄り添う姿がとてもいい…。
実はこちらのお住まいは、トラックの運転手を生業とされるお施主さまの為に計画されたもの。
敷地内に10tトラックを停めることができるように、という要望に応えるために、四角い敷地に対して細長い住宅を斜めに配置し、そのスペースを確保。そのおかげで、住宅とトラックの間に三角の中庭のような余白の空間が生まれています。
無垢材の魅力が小さなディテールにまで宿り、住まいに統一感と温かさがもたらされた住まい。
触れるたびにつたわる自然素材ならではの質感が、日々の暮らしの中で心をほぐし、どこかほっとするひとときを演出する。暮らしに寄り添った細やかな配慮と、無垢材の魅力を存分に引き立てる設計が光る、心地よい住まいの事例です。
(写真提供:オジモンカメラ 高橋希)
コマド意匠設計室
秋田を拠点に活動している設計事務所。
住宅や店舗などの空間設計のほか、展示計画、