住んでいるのはご夫婦とワンちゃんのご家族。100㎡越えのスケルトンになった広々とした空間を、間仕切り1LDKの間取りに変えたお部屋です。「木軸(もくじく)」と呼ばれる、木造の建物の構造体をモチーフにしたものをコンクリートの箱の中に柱や長押のように組み立て、そこに日本家屋の伝統的な建築工法である「真壁(しんかべ)」という、柱や梁を露出させて仕上げた内壁を取り入れています。
100㎡越えの1LDKと聞くと、ガランとした空間を想像してしまいますが、そこに広がっていたのは木軸が交差し、視線や光は抜けるけど、程よく空間が区切られていて、安心感のある空間でした。
一部の壁だけウッドパネルを貼っています。全面に貼るのではなく、一部にすることで空間にメリハリが生まれて、 ワンルーム的な家の中でアクセントになっていますね。ウッドパネルのおかげで部屋の中の木の面積が増え、木のぬくもりでリラックスできそうです。
真壁の上部分には壁を作らず、腰壁にしています。視界を程よく遮りながら、光、風、空気はつながっているのを感じられる空間です。
木軸にはライティングレールが設置されていて、様々な場所にライトを設置したり、植物を吊り下げたりできます。木軸をうまく活用し、その時その時の気分で居場所にしたいところに灯りを吊るして、広々とした空間を余すところなく使えるようにしてる自由な空間になっていますね。
キッチン側には中庭につながる窓がL字にあるので、光がたくさん差し込んできます。
床に使われているのは、わんちゃんの足にも優しい杉のフローリング。木軸だけでなく、杉、障子も和の空気を感じさせる要素になっています。
窓際で日向ぼっこしているワンちゃんを眺めながらキッチンでお茶を淹れて、ほっと一息。お茶の湯気がよく似合う空間だなと暮らしを想像してしまいました。
左の中庭からの光と右のガラス戸からの光、両サイドから光が差し込み、陰影が落ち着いた雰囲気をつくっているキッチンスペース。
木製のカウンターとキッチン。シンクには『ハンドホース水栓』、コンロ上には『フラットレンジフード』が使われていました。ステンレスの天板と組み合わせてシャープな佇まいにしています。
キッチンの壁には、クリーム色の長方形のタイルを取り入れています。真っ白よりも、木に馴染んでいますね。縦長に貼ったタイルはカウンターのパネルとリンクしていて、全体をスッキリとした印象にまとめています。
キッチンの右側にあった全面ガラスの引き戸の先は、古民家のタタキを思わせる土間床の玄関。ガラス入りの引き戸から中庭まで視線が抜けて心地よいです。
写真は引っ越しの3ヶ月後。
お施主様が持ち込んだ様々な国のアンティーク家具や雑貨が、空間にマッチしています。手前に置かれた戸棚も、造作されたかのような馴染み具合です。
仕切りがないところには2種類ののれんを重ね付けしていました。ワンちゃんもスムーズに通り抜けできますね。
絨毯やレザー、布など、素材感の感じるアイテムたちが、木をふんだんに使った空間に馴染んでいます。温かさをより引き立てるお部屋ですね。ガラスの真ん中から見える中庭の緑が絵画のようにも見えてきます。そこに合わせて出窓にはアートピースを並べたりするのにもばっちりです。
和の空間の「和」
和やかの「和」
多国籍なアイテムたちをまるくおさめる「和」
いろんな「和」を感じられるセンス溢れる事例でした。
宮田一彦アトリエ
古家の改修が大好物な鎌倉の設計事務所です。
現状残された要素を自分なりに解釈して住みやすい空間に再構築。 傷や汚れも「味」に思える空間が理想です。 懐古趣味ではないれけど、ベースである古家へ敬意を払う。そんな想いで設計しています。