撮影:長谷川健太

今回ご紹介する家が建つのは、かつて商店街だった敷地。周囲は住宅が密集していて、目の前は、人通りの多い道路です。

家主の希望は「日常の生活のしやすさを考えて、一階に居間を設けたい」というもの。

道路に向けて居間を配置しても、人通りがあるためカーテンは閉めたままになってしまうだろう。かといって、敷地の大きさから庭を設けるのも難しい……。

ならばと、生まれたのがこちらの外観。

撮影:長谷川健太

2階部分に外廊下のような部分……?何やら気になりますが、玄関からお邪魔して見ていきましょう。

1階部分は、玄関からウォークスルークローゼットを通って、洗面室・浴室へと一直線に繋がる間取り。大きな窓が必要ない空間を、道路側に配置しています。

撮影:長谷川健太

そして、玄関から右手に広がる居間部分。外との繋がりを届けるためにつくったのがこちら!

撮影:長谷川健太

お部屋の中央につくられた小さな中庭。掃き出し窓で3面が囲われていて、自然光を拡散する光庭としても機能しています。

撮影:長谷川健太

一段分の段差がついた中庭は、ステージのよう。居室のどこにいても、眺望を楽しめる特別な空間です。

温室のように植物たちをモリモリと配置して、巨大なテラリウムをつくってみたいような衝動にかられます。

撮影:長谷川健太

こちらはリビングからの眺め。

中庭の代わりに、室内の広さをめいいっぱい取るという選択もありますが、窓を開け放って、縁に腰掛ければ、リビング・ダイニングの延長として使える。何より立体に差し込む自然光と、眺めのよさは、お部屋の広さ以上に開放感を感じさせてくれます。

ダイニングの奥にチラリと見えるのがキッチンです。

撮影:長谷川健太

木製システムキッチン』のラワンに合わせて、上部の棚やレンジフードの幕板も造作。背面に艶のあるタイルを貼り上げて、リビング・ダイニングとの雰囲気に変化を持たせて。

目の前の窓からはお庭の植栽が見えます。半個室の壁付けキッチンでも、景色に抜けがあり手元に光が注ぐ。小さな鉢植えを置いてみるのもいい。ひとつの窓が、キッチンに立つ時間を心穏やかなものにしてくれそうです。

撮影:長谷川健太

ところで、先ほどから2階へと上がる階段が二手に分かれているのが気になっていました。

中庭の階段を上がると広がっているのは……

撮影:長谷川健太

なんと、屋根付きのテラスルーム!下から見上げた時に、外廊下のように見えていたのはこの部分でした。

このテラスルームの下に位置するウォークスルークローゼット・水回りは天井高を低くしていて、その分、床のレベルを下げているそう。逆に中庭の床や居間の天井のレベルを上げることで、テラスルームへと大きく開いて繋がるような感覚を演出しているのだとか。

撮影:長谷川健太

そう言われてみると、上部がガラスになったリビング側の掃き出し窓からは、見上げた先に青空が飛び込んできます。

中庭やテラスルームをただ配置するだけではなく、上下階の床・天井レベルの操作によって、外との距離がぐんと近づいたような気がします。

撮影:長谷川健太

バルコニーとも、庭とも違うテラスルーム。

天気が良ければここで仕事をしたり、お茶をしたり。夜はお風呂上がりにちょっと涼みに来たり。お部屋として過ごせる広さを確保しているので、プライベートな外部空間として色々な過ごし方ができそうです。

撮影:長谷川健太

個人的には、友人家族を招いて、中庭とテラスルーム、上下階でテント泊を楽しむ……。なんて妄想を広げてしまいましたが、家の中にも外にも過ごす場所がたくさんあるこの家なら、実現できそう。

撮影:長谷川健太

2階の個室を繋ぐ廊下部分も、掃き出し窓に面しているので日当たり良好。通り道でありながら、縁側のように過ごすこともできる一角です。

撮影:長谷川健太

撮影:長谷川健太

居室のプライバシーは確保しながら、どこにいても外との繋がりを感じながら暮らせる家。

中庭とテラスルーム、家の中とも外とも言い切れない間の空間は、子供の声やランニングの足音、季節によって変わる空気の匂いなど街の変化や気配を運んでくれるようです。

撮影:長谷川健太

※こちらの事例はimageboxでも詳細をご確認いただけます。

須藤剛建築設計事務所

「建築を通して日常に新しい価値をつくる」
わたしたちは、建築の設計をベースに、社会や暮らしに新たな価値を生み出し、身近な生活を豊かに送れるよう、既製概念にとらわれないものづくりを行っています。
建築は竣工して完成なのではなく、人を招き入れたくなるような、また自然に人が集まってくるような、人と人とをつなぎ、人が集うことで完成すると考えています。
そのために対話を大切にし、価値観を共有し、理解を深めながら、そこにしかないものをつくっていきたいと考えています。

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テキスト:岩崎

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