自分がいいと感じるものを
賃貸不動産オーナーのAさんは、借り主の退去がある度にクロスの張替えからクリーニングまでを一通り繰り返す原状回復に日頃から疑問を感じていた。周辺には同じような賃貸ワンルームマンションが多く、他物件との差別化が図れていないことも気がかりだった。
元々使いこんでいけばいく程どんどん飴色に変わって味わい深くなっていく革のような、そんな素材が好きなAさん。
本物志向の素材を使えば、少しぐらい傷があっても経年変化を味わいとして感じて入居してくれる人が100人中1人位はいるのではないか、と思うようになり、まずは所有物件の一室を自分が借りたくなるような、納得のいくリノベーションをしてみよう、と心に決めた。
材料の吟味からスタート
まず手始めに、各種メーカーのフローリングのサンプルを取り寄せてみた。
無垢風、カフェ風、など言葉の響きはよかったが、質感よりもコストパフォーマンスやメンテナンス性を重視した商品が目立った。
確かに賃貸でメンテナンス性を無視すれば、その後の管理が大変なことは目に見えている。それでも、質感にはこだわりたかったAさんは、ある日口コミからtoolboxを知った。
DIY経験ゼロからの挑戦
物件は約20㎡のワンルーム。壁の量が多く、家具の配置が否応なく決まってくるプランだった。
間取りはこれ以上変更しようがないが、設備はなるべく小スペースにまとめ、出来る限り床面を広く見せようと思った。
全体の設計はAさんが行い、工具調達からスケルトン解体工事までの施工に関する事は、鳶職人の友人に教わりながら進めた。
電気や衛生設備の施工はさすがにプロにお願いしたが、仕上げの塗料選定や塗装、棚板・小物類の設置はAさんが1人で行い、約2ヶ月かけてようやく完成にこぎ着けた。
一つ一つの素材と向き合う
toolboxで購入した素材は
・足場板
・BRIWAX ウォルナット
足場板は使いこなされた味わい深さが特徴的な床材だが、季節によって反りが出るため施工が難しく、ささくれがあるため素足やストッキングでは歩くのが難しい、特に賃貸ではかなりハードルの高い素材。
Aさんは荒い表情を残しつつも1枚毎に丁寧にヤスリ掛けを施し表面のささくれを取り除いて、素足でも歩ける仕上げとした。塗装はある程度の耐久性を考慮し、試行錯誤の結果、ホームセンターで手に入るツヤ有りのクリアニスを塗布した。
「足場板は側面の加工をせずに床に貼ったので、施工は難しかったけれど、他の素材では表現できないシブさが出せたと心底満足しています。足場板の武骨さ、あたたかさ、なつかしさ、やわらかさに惚れ惚れしました。凡百のフローリング材をつかっても、この味わいは絶対に出ないと思いました。」
一つ一つ違う表情なのも、古材ならでは。
今、ではなく、これから先を見据えて
お金をかけてリノベーションしても、賃料を大幅にアップさせることは難しい。しかし、賃貸でも借り主が心地よく暮らせたなら、長く愛される物件となり空室になりづらくなる。
今、ではなく、これから先を見据えた、そんなお手製のリノベーションを、今後もAさんは続けていこうと思っている。
おまけで既存の間取り。小さい部屋なのに壁の量が多く、狭い印象でした。