賃貸をめぐる環境変化
近頃、改装自由の賃貸物件なるものが増えています。
たいていの場合、事前に何をするかのオーナー承認は必要ですが、承認されると原状回復義務が免除になるというもの。入居者側は自分の好きな空間を造り込むことができ、またオーナー側ににとっても物件自体のバリューアップや集客に繋がるため、お互いに嬉しいというカラクリです。
このような賃貸を取り巻く環境変化の中、実際にご自身で改装自由物件を探し、改装も自らの手で行ったKさんの事例をご紹介させていただきます。
さぁ来い!と言わんばかりの改装前の状態。改装欲を掻き立てます。
勇気と努力と決断力
Kさんはある日床板を求めtoolboxに問い合わせをしてきました。
実物のサンプルを見たいという事でオフィスにお呼びしたところ、お若い女性です。しかも自分で貼るための床板を探しているそう。
詳しくお聞きすると「このたび改装自由物件を借りたので、自分で改装を楽しもうと思う。床を貼ったことや塗装経験もなく、DIY自体初体験だが、なんとかやれそうな気がする。」という衝撃の発言。
改装自由物件が増えているとは言え、その入居者はある程度手作業の経験がある男性だったり、結局はそれほど手をつける事なく住んでいたり、というイメージを描いていた僕は、Kさんの勇気と努力と決断力に感服し、即座に必要になる道具や作業工程をレクチャーさせていただいたのです。
丸ノコもご自身で購入。道具の使い方やコツはマニュアルを読んでも良くわからないもの。
頼りになる助っ人
とはいえDIYには施工要領書や取扱説明書があるわけではありません。「これを使ってこうやってこうするとこうなるよ」と口では簡単に言えますが、特に改装の場合は現場ごとに下地の状況や環境が異なり、一概に「こうすればOK!」というのが非常に難しいのです。
DIYはライブです。生放送では何が起きるかわかりません。またそれに対する準備も必要です。しかも実際に作業する方の能力によっても道具や方法が異なるケースがあるため、実際に作業を行いながらの説明が本当は一番わかりやすいのです。
ただ、DIYに一番必要な、「とにかく自分でやってみよう!」という思い切りの良さをKさんはお持ちだったため、DIYサポートのご利用をおすすめしました。
今回Kさんが希望されていた改装の内容は主に塗装・珪藻土塗り・床貼りでしたが引越までにあまり時間的猶予もなかったため、DIYサポートの適用は一番難易度の高い床貼りのみとし、その他の作業はレクチャー後にご自身+お友達で作業していただく事となりました。
自分でつくった愛着のある部屋
事前に近隣ご挨拶も完璧にこなしていただき、作業は順調に進みました。床貼りに必須の釘止めの作業は、Kさんも想像以上の音に途中からボンドのみで貼る方法に変更。このあたりの判断も、DIY且つ経験者が横にいるからならではのライブ対応です。
壁際の納めもやはり初心者にはピッタリ精度を出すのは難しいものですが、そこには敢えてスキマを残し、後に貝殻を埋め込むスペースとしたそうです。
お邪魔した時にはKさんらしいなんともかわいらしいお部屋が完成していました。
敢えて残したスキマ。ここに貝殻を埋め込む予定。
壁の色も、飽きがきたら塗り直せば良い、必要になったら棚を付ければ良い、次はタイルを貼ってみよう、失敗したらまたいつかやり直そう。
そうして作った手触りの残った思い出ある部屋は、供給者側の理論で作られた現在の賃貸住宅ではまず得ることができません。
それを可能にさせるような環境づくりが、徐々に整ってき始めました。空間づくりをもっと身近に、気軽にするべく、toolbox は日々その商材開拓とサービスの提供をがんばって参ります。
株式会社 HandiHouse project / ハンディハウスプロジェクト
合言葉は『妄想から打ち上げまで』。
設計・デザインから工事のすべてにおいて、施主も一緒に参加して作っています。
家づくりが趣味になれば暮らしも豊かになる。そんな思いで活動している建築家集団です。