ご主人が地元の商店街を散歩されていたときに、たまたまこの物件を見つけたことがそもそもの始まりだったそう。実はこの物件のある商店街一帯は、有名建築家「板倉準三さん」が設計されたという、特別な背景があります。

「昔は人が集まる商店街だったけど、今では全然人がいなくて」とご主人から話を聞いた奥様は、「じゃあ、住みながら私がお店をして、地域の人が集まれるカフェにしようよ」と地域の方達のためのコミュニティーカフェを自宅で始めることを提案されたそうです。

そんなご主人の運命的な巡り合わせと、奥様の前向きな後押しにより、お二人のリノベーションは始まりました。

住居の玄関側の建物外観。RC剥き出しだった外装を白く塗装して仕上げています。

まずは1階のカフェスペースからご紹介していきます。

「特別な建物だからこそ、元々の形跡を残したリノベーションがしたいと思って」というご主人のこだわりから、天井は元の状態のまま、あえて手をかけずに剥き出しの躯体のまま残したのだそう。木目模様のついたコンクリートからは、木枠の型でコンクリートを固めていた昔の面影が感じられます。

躯体の荒々しい表情に木の造作カウンターをあわせ、素材感を生かした心地よい空間に。

こちらのキッチンスペースにステンレスの「フラットレンジフード」を採用いただきました。

サブウェイタイルをアクセントに、ナチュラルなトーンにまとめたやさしい雰囲気のカフェのキッチンスペース。

家づくりで楽しかったところは?という質問に奥様は
「一番は選べる楽しさですね。特にタイルの打ち合わせが楽しかったです。壁材やキッチンはあまり凝ったデザインの物を選ぶと空間がごちゃっとするかなと思って、シンプルな物を選んだんです。でもタイルはアクセントとして使えるので、色々なデザインに挑戦できて楽しかったですね!」

たしかにちょっと取り入れるだけで空間の印象をがらっと変えることができるので、タイルのワンポイント使いはとてもオススメ。形状や質感、表情の違いなど種類が豊富なのも魅力。自分のお気に入りを見つける楽しさがあります。

カフェの裏口は、住居スペースの玄関につながっています。

玄関脇には、アウトドアグッズなどのかさばる趣味の道具たちやストックなどを大量に置いておける収納スペースが。壁はOSB合板の仕上げなので、後からフックなどのパーツでカスタムしたりなんかも簡単にできそうです。

お気に入りの靴は飾るように収納して。

あえてRCの躯体の表情を残したまま仕上げています。

収納スペースの反対側には2階の住居スペースにあがる階段があります。玄関周りの壁や天井は、RCの躯体の凹凸のある表情を残したまま、白塗装で仕上げました。

カフェの雰囲気とはうって変わり、2階の住居スペースはモノトーンのすっきりとした空間に。

それは、家事・育児をこなしながらカフェでの仕事を両立されている忙しい奥様が、なるべく掃除を楽に行えるようにという配慮から。住居スペースは主にご主人の意見が反映された空間となっています。

余計な掃除が増えないようにと、オープン収納は一切無くしたのだそう。キッチンと同じ面材で仕上げた収納力抜群のカップボード。洗面も、掃除しやすいように、洗面台と洗面ボールが一体型のものを選んだのだそう。

「どうしたら毎日ストレスなく、心地よく暮らせるか」自分たちにとっての暮らしやすさを考えること。家づくりをする上で、とても大事なことですよね。

実はお二人とも、もともとカフェ経営をしていたわけではなく、今回家づくりもカフェづくりもはじめての経験だったと言います。

物件購入後に相談した最初の会社は、希望となかなかマッチせずにプランが完成しなくてとても苦労したのだそう。難航しすぎて諦めようと思っていたときにたまたま立ち寄ったのが、今回の物件で設計施工を担当した美想空間さんが運営している「KLASI COLLEGE」だったといいます。

「カフェ運営もしている美想空間さんはまさにぴったりで、色々な条件が重なってまさに運命だと思いました」

物件もリノベーションの依頼先も運命のような巡り合わせだったと話すお二人。

地域に開かれたスペースをつくりたいというお2人の想いから生まれたこの場所で、また新しい素敵な巡り合わせが生まれていきますように。

(ヤマキ)

株式会社美想空間

美想空間が得意にしているのは、戸建てリノベーション。毎日のふとした時間に豊かさを感じられるような、日常の余白=「あそび」を楽しむことができる、「あそび」のある暮らしを提案します。また、自社で運営するリノベーションのショールーム複合施設『KLASI COLLEGE(クラシカレッジ)』では、そんな「あそび」のヒントになるような普段の暮らしがちょっと楽しくなるワークショップやイベントを開催したり、美想空間のスタッフ自ら選書した本コーナーを展開しています。

関連する事例記事

あわいをたゆたう家
あわいをたゆたう家
必要な機能を配置したら、間を土間と路地で繋ぐ。その路地が行き止まりなく外まで貫通していく家。家の中と外の境界を曖昧にするような戸建てリノベーション事例です。
実家と庭と、あたらしい住まい
実家と庭と、あたらしい住まい
今回ご紹介するのは、ご夫婦と子供2人の4人家族のお住まいです。 子供の成長を機に賃貸マンションから一軒家を検討する中、ご主人のお父様の提案で、実家の広い庭を分割して新たに家を建てることを決められたそう。既存の庭をなるべく残すため新築はコンパクトにしつつ、豊かな暮らしをつくる工夫が詰まった住まいをご紹介します。
ずらして、映して、灯して。移ろいに目が向く住まい
ずらして、映して、灯して。移ろいに目が向く住まい
30代男性がリノベーションした64㎡の住まい。一見すると、無駄な要素を取り払ったミニマルな空間ですが、目を凝らすと日々の移ろいを享受するための工夫が散りばめられていました。
「好き」の中に暮らす
「好き」の中に暮らす
お施主さんとその娘さんが二人三脚で進めたマンションリノベ。自分たちにとっての居心地の良さを大切にしてつくったインダストリアルな空間で、趣味であるサバイバルゲームの道具と共に暮らす住まいです。