兄弟サイト「東京R不動産」のメンバーがはじめたニューニュータウンプロジェクトの舞台。
東京・荒川区の西尾久の商店街に出来たギャラリー兼食堂「灯明」にお邪魔してきました。
お店は、のどかな商店街沿いにあります。ガーデンというかすれた文字があるということは、元お花屋さんのようです。
ちなみに、この通りをまっすぐ行って、徒歩1分くらいのところに、兄弟サイト「東京R不動産」が運営する食堂「おぐセンター」と、ガラスボール照明をいっぱい使ってくれた「串カツ専門にしかわや」があります。
東京R不動産がやっているニューニュープロジェクトとは関係なく、家賃が安い店舗を探してたどり着いたのが、たまたまこの西尾久のまちだったのだとか。
ギャラリー「LAVENDER OPENER CHAIR」と山形料理の食堂「灯明」。
同じスペース、同じ経営ですが、あえて名前を分けてます。『入口は2つ。入ったら1つ。』これは、この場所をはじめる時の紹介文に書いてあった一文。ギャラリー目当てに来る人も、食堂目当てに来る人も、同じ小さなスペースに居合わせるつくりになっています。
手前がギャラリー部分。むき出しの床に、蛍光灯がランダムにぶら下がってます。
この日は、GAKUDAI KAWASUMIさんの展示をやっていました。作品たちは、全て購入可能です。
実はこの蛍光灯、よくある富士型のものを一度分解して、カバーを外し組立直しているのだとか。こういうスケルトンの空間に似合いますね。
そして、奥のカウンターが食堂です。
カウンターの奥にいるのが、店主の冨樫達彦さん。カウンター左の女性と、この日はお休みだったもう一人、3人で運営しています。
実は、冨樫さんは、現代美術作家でもあります。アートを身近に感じて欲しいと、ギャラリーであり、まちの食堂という10坪強のスペースを立ち上げました。その熱い思いは、お店立ち上げの時に実施したクラウドファンディングのページも合わせてご覧ください。手前のギャラリーも、冨樫さん自身がキュレーションして、国内外のアーティストの作品が展示されています。
冨樫さんの実家は山形の農家だそうで、カウンターでは、美味しい山形の郷土料理と、お酒がいただけます。ちなみに、カウンター正面に離れて座る二人は、設計を担当したstudio nikoのお二人。冨樫さんと、担当の佐藤さんとは、オランダ留学時代に知り合いったのだとか。
厨房の薄ピンクの壁には『カプセルライト』が。手ごろな値段でタフそうなところ、主張が強くないけれどかわいらしい感じなところも、この空間に合うなと選んでもらったポイントだったそう。
このピンクの壁が淡くてすごいいい色だったのですが、カメラではうまく捕らえきれず……。ぜひ実物を見に行ってみてください。
ちょうど、このカウンターを境にギャラリーと食堂部分、壁の色と電気の色で空間が分かれています。
カウンター上の照明下についているメッシュのものにご注目。これ、実は「寒冷紗(かんれいしゃ)」。建築の方だと、塗装のボードのつなぎ目に貼るもの。園芸をやる方だと、防虫、遮光ネットとして知られているものです。
照明は、肌電球が仕込まれていたのですが、そのままだと光が強過ぎ、後ろの壁にくっきり影がでるレベルだったそう。そこで、光をやわらげるためにこのメッシュシートを貼ったそうです。磁石で取り外しができ、汚れたら簡単に取り換えられるのもポイント。おかげで、ふんわり、いい感じの柔らかい光が広がっています。
この日も夕方から、常連らしい近所のおばあさまがふらりと立ち寄り、仕込まれたばかりのメニューをアテにお酒を楽しんでました。現代アートと聞くとちょっと難しいイメージもあるかもしれません。でも、とんがりすぎず、まちに溶け込んでいる感じがすごくよかったです。そして、ごはんもお酒も沢山いただいたのに、お値段もとってもお手ごろ。家賃の安い下町素晴らしきですね。
話すのと食べるのに夢中で、お料理は撮り忘れてしまったので、お店のInstagramをご覧ください。
ご近所の「おぐセンター」、「串カツ専門にしかやわ」の事例も合わせてどうぞ。
ありがとうございました。
(来生)
studio niko / 笹本直裕 + 佐藤研也
東京と故郷である仙台の二拠点を中心に活動する二人組。
賃貸物件の1棟改修、分譲住宅、シェアハウスといった事業性とデザインが複雑に絡む案件から、拘りを実現する戸建て住宅や飲食店、アートギャラリー、展覧会の会場構成まで。分野に限定されない設計活動を続けています。
「多層的な発想と経験をもとに1件1件の企画・設計を丁寧に進めたいと考えています。」