仕事も趣味も、生活も。30㎡のワンルームで完結する暮らしを続けていると、忙しい時ほど過ごす場所の境界が曖昧になってるなと感じます。「なぜこんなところにこんなものが!?」なんて日常的におこり得ます。(片付けが苦手なだけかもしれませんが……。)
今回紹介するのは自宅勤務で長い時間を過ごす、男性一人暮らしのお家。完全に壁で仕切らないワンルームの間取りですが、オープンな使い方とも違う。このお家、過ごす場所ごとの仕切り方が「技あり!」なんです。
「ただいま」と玄関を開けてまず目に入るのがこのパーテーション。
木枠に『アイアン塗料』を塗って仕上げています。塗るだけでざらっと鉄の質感になる塗料です。鈍い光沢のある粒子が、奥の窓からの光を受けて絶妙な表情をつくりだしています。
間仕切りの中は更に区分けされていて、左に行くとウォークインクローゼット。
帰ってきたら上着や鞄はここに。くつろぐスペースとしまう場所が分かれた計画。家の中の秩序を保つために、実はとっても大事なことかもしれません。
そして振り返って反対側にはワークスペース。
広いデスクに収納もしっかり確保されています。資料や文房具、PC周辺の細々としたケーブルたちなど、仕事に必要なものは全てここに集約!リビングからは目に入らないので、デスクに仕事道具を広げたまま、一日を終えたっていい。なんとも羨ましいつくりです。
よく見ると、ガラスが入っているのは廊下側の一部分のみ。空いている格子の間をブレースが通っています。
実は、解体前の既存天井がブレース現しのつくりだったそうで、それを隠すのではなく、活かす方法はないか?と、見合う素材を探していたそうです。パーテーションを採用する際に「基地」のような空間を演出したいと、無骨な雰囲気の「アイアン塗料」仕上げを選択いただきました。
ザラっとしたテクスチャが加わることで、この家の象徴的なスペースに。こっくり飴色のパーケットフローリングにチャコールグレーの色味もよく似合っています。
ちなみに、リビングとワークスペースの間もガラスは入れず、格子のみ。
でも、ちゃんと区切られている感覚があるのが不思議です。
さて、一日の仕事を終えたらキッチンへ。
『オーダーフレームキッチン』に『フラットレンジフード』とステンレス素材で素材で統一されたキッチン。『スチールラック角パイプ』や『ハンガーバー』など小物で無骨な鉄の素材感をプラスしています。
プロの厨房のようなストイックな雰囲気もありながら、「ちょっと今日は料理しながら、お酒飲んじゃおうかな」と思わせてくれるような居心地の良さもある空間です。
ただ調理する場所だけでなく、ちゃんと居場所として機能しているのは、背景に合わせた『フォグタイル』の存在が大きいのかもしれません。表面のマットな質感が、照明の灯りを柔らかく見せてくれています。
キッチン空間だけ、床を切り替えて。
ひと繋がりの同じ空間でも、ダークグレーの床に変わることで、気分まで切り替わるような気がしますね。
キッチン横、ネイビーの壁で仕切られているのはベットスペース。一面に広がる深い青……眺めているだけで一日フル稼働していた頭の中も鎮まりそうです。
こちらの壁も、ブレースを通すために上部を切り欠いています。キッチン側まで光を届けてくれる役割もあるようです。
ちなみに、洗面やトイレにも、アイアン素材のアイテムが散りばめられていました。『ハンガーバー』に『アイアンラック』、『アイアンペーパーホルダー』ダブル。
いかがでしたでしょうか?柄・色・テクスチャの合わせ技!
普通はひとつ、柄や色を取り入れたら、周囲は引き算で……と考えられがちですが、艶感と色のトーンが揃っているからか、全体で見た時にとても統一感ある空間に仕上がっています。
また、過ごす場所によって目に入る景色が変化して、とっても豊か。日常を楽しく過ごせそうです。
(岩崎)
itoma design. / イトマデザイン
住宅・店舗・オフィスの設計・インテリアデザイン
男前なかっこよさと、使いやすさなど細やかな女性らしさの按配がお上手な女性デザイナー 勝又みづきさん。
素材の組み合わせや金物づかいは、とても参考になります。
・工場と駅のタイルと金物に心踊ります
・植物に囲まれた生活に癒されております
・猫科な性格です