オリエンタルなラグとクッションが良いスパイスになっています。(撮影:マツダナオキ)

新築マンションの見学会に足を運ぶも、好みの内装の家がないことに気づき、中古マンションのリノベーションで「理想の内装」をつくり上げることを選択した、二人暮らしの住まい。

既成の空間では満たされなかったお二人の「理想の内装」とは、一体どんな内装なのでしょう?詳しく見ていきましょう。

「食器が好きなので、“しまう”というより飾って見せられる棚にしたかった」と、開放的なつくりにした食器棚。(撮影:マツダナオキ)

施主のリクエストだったというモルタル仕上げのキッチン。下部はオープンで、素っ気ないつくりになっています。

そんなキッチンに合わせて選んだのは「ただの箱」感がある、『フラットレンジフード』。洗練された形状のレンジフードが、モルタルキッチンの無骨さを引き立てます。

異なる高さの棚に規律正しく並んだお皿、鍋、調理器具たち。ここから「行ってきます!」と出勤し、仕事が終わって棚に戻ったら「ただいま!」との声が聞こえてきそうな、収納というよりも道具たちの「居場所」と呼びたいスペースです。

モルタル仕上げのキッチンに負けない存在感があるスプリング式の水栓。(撮影:マツダナオキ)

躯体現しの壁にモルタルキッチン。

コンクリートの無機質な印象が際立つ空間に、無垢の栗フローリングで木の温もりをプラスしています。

ベッドルームも、コンクリート躯体現しと木製パレットでざっくりとした素材感の空間に。(撮影:マツダナオキ)

ふむふむ、なるほど、お二人の「理想の内装」とは。

「無機質な素材感とぬくもりのある木でつくるシンプルな内装」ということだったんですね!

……と思ったら、おや……?

塗装仕上げのようなマットな質感のグレーの壁紙。白ではなくグレーを基調とすることで空間にユニークさを演出しています。(撮影:マツダナオキ)

現れたのは、発光する円いミラーとフロート型の洗面台が、近未来的な雰囲気を漂わせるホール。

ガラッと雰囲気が変わったようにも感じますが、床はキッチンと同じグレーのビニル床タイル、ドアには無垢のタモ材から削り出した『木のドアパーツ』が使われ、「無機質なグレーと素材感のある木」のルールが共通しているところがポイント。

ホールを広く感じられるように洗面の壁をなくし、湿気がこもらないように上下をオープンにした脱衣所のドアなど、機能性を考えたデザインながら、遊び心も感じる空間に仕上がっています。

エクストラルーム奥の壁の上部には通風パネルを設置。隣接するウォークインクローゼットの空気を循環させるための工夫。(撮影:マツダナオキ)

こちらはリビングの一角にあるエクストラルーム。ポップなピンク色の壁とアール壁がスペーシーな印象をつくっており、その奥に鎮座するモルタル仕上げのキッチンとの対比がユニークな空間です。

「インダストリー・レトロフューチャー」とでもいいましょうか。

異なるテイストを織り交ぜることで、オリジナルな世界観を表現しています。

2種類のライトがアクセントのウォークインクローゼット。(撮影:マツダナオキ)

途中までは、木とコンクリートの質感でまとめた「シンプルな内装」が好みなのだと思っていましたが、徐々に近未来的な空間やポップな部屋が現れ、印象が「個性的な内装」に変わってきました。

エクストラルームの壁の一部をアール壁にして、視線や動線がスムーズに流れるように演出。(撮影:マツダナオキ)

お二人が求めていた「理想の内装」のテーマとは、「個性的なシンプルさ」。

個々のテイストをしっかりと盛り込みつつも、余白を残した空間づくりと色味の統一で、複雑さを感じさせない内装になっています。

シンプルとひとくちに言ってもその表現はさまざま、自分たちの好きな要素を研ぎ澄ましてかたちにした、唯一無二の「シンプル」もある。

そんな、「好き」を突き詰めていく家づくりの面白さを教えてくれる事例です。

(山本)

株式会社アートアンドクラフト

建築設計/施工/不動産仲介/建物再生コンサルティングのプロ集団です。
大阪・神戸・沖縄を拠点に、マンション1室からビル1棟まで既存建物の再生を得意としています。

大阪R不動産も運営しているtoolboxのグループ会社です。

紹介している商品

  • 写真の「フラットレンジフード アイランド型 W750 ホワイト」は仕様変更前のもので、現在販売しているものとは仕様が異なります。(仕様変更前:全艶塗装 → 仕様変更後:2分艶塗装)

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