ラフな素材を中心に取り入れた、約74㎡のマンションリノベーション。
最初に気になったのは天井が黒いということでした。家主のTさんは、「当初は天井を躯体現しをにしたい」と考えていたそうですが、購入したマンションは最上階。断熱対策のため、天井の躯体現しは諦め、黒のクロスを貼ることにしたそう。最初から狙っていたのでは?と思うくらいに、黒を大胆に使った天井が各空間の魅力を増しているように感じました。
それだけではなく、一部の壁や梁に残した躯体現しや、ラフな素材選びもポイントです。少しのぞいてみましょう。
ショップのようにお気に入りを収納する
玄関土間は、趣味や洋服などの収納スペース。躯体壁をバックに大好きな自転車をディスプレイしています。
写真右手のウォークインクローゼットは開口部にエキスパンドメタルを使い、風や光を通して、閉じ切らない空間にしました。躯体壁や床のコンクリートが大部分を占める空間に金属が入ることでよりラフな印象に。
自然光は取り入れていますが、天井が黒いため落ち着いた明るさです。その空間に洋服が並ぶと、こだわりの古着屋さんやモード系のセレクトショップのような空気を感じます。
玄関を入ってすぐのシューズラック脇には『マリンデッキライト』のゴールドを採用していただきました。他の照明・パーツ類は黒で揃えていますが、おかえりの灯りは真鍮でやわらかく。
ダイニングにつながるドアは、吊り戸に。大きなガラスがこの先の空間を広々と見せていて、この先にはショップ併設のカフェがあるような雰囲気すら感じました。
お店のようなカウンターキッチンで晩酌する
そして事例を見て何よりときめいたのはこのキッチンです。バーカウンターと作業台でキッチンを囲み、厨房のような佇まいに。
家主のTさんが「憧れだった」というバーカウンターは、足場板を天板に、アカシアのフローリングを加工して造作しました。躯体現しの壁と梁、天井の黒いクロスという無機質な空間に、アカシアのはっきりとした木目が映えています。
飲食店スタッフの経験がある私は、カウンターの中が大好きなスペース。お客さんにお酒を作ったり、料理を提供したりしながら、お客さんに一杯いただいたり、お話ししたりする時間が大好きでした。家族や友達とそんな時間を過ごせそうなこのキッチン! たまりません!
このカウンターキッチンをみて、飲食店に勤務していた時を思い出したのは、キッチンの形だけではないように思うんです。本当のバーのような、明るすぎず暗すぎない絶妙な明るさで落ち着いて飲めるような空間演出。
きっとそれはショップのように感じた土間空間にも共通することで、この空間全体がお店のような空気を纏っている。それは、ラフさを強く感じさせる躯体現しの壁や梁、そして、重厚感のあるこの黒天井にあるのかもしれません。
(庄司)
株式会社アートアンドクラフト
建築設計/施工/不動産仲介/建物再生コンサルティングのプロ集団です。
大阪・神戸・沖縄を拠点に、マンション1室からビル1棟まで既存建物の再生を得意としています。
大阪R不動産も運営しているtoolboxのグループ会社です。