設計をなりわいとしているご夫婦、梅村陽一郎さん、神永侑子さんが、横浜の弘明寺商店街ではじめた商い暮らし。

古いビルの3階を住居として借り、1F路面店を暮らしの「ハナレ」商いの実験場と運営し、セットで借りて暮らすという試みです。

そのビルの3F住居部分のリノベーションで、「キッチンベース」をカスタムして使ってもらいました。

この写真だけ見ると、スケルトンのハードな空間に合わせたシャープな印象のブラックキッチンにしか見えませんが、実はこちらの「キッチンベース」は、システムキッチンの面材部分だけMDFの素地のままお届けし、表面をお好きに仕上げてもらうというもの。

こちらが素地状態(実際は組立前の状態でのお届けです)

え、そもそもこれで工事終わり?ここに住んでるの?(失礼!)な状態のこちらのお家ですが、まずは、大工さんに解体と設備を施工(一部仕上げ工事も)してもらい、それ以降の仕上げ部分や作り付けの家具は、引っ越してから住みながら進めることにしているんだとか。まさに暮らしの実践の場。

なぜ、あえて「キッチンベース」を選んでいただいたのかについて質問してみたところ

「コストの面と、こんなのがいいのでは?など、ひとつひとつ試しながら仕上げる中で、通常と逆で、塗装などの仕上げの工事よりも、ラグやソファの家具や生活家電など普段工事するときにはないものをあえて先に設置して、そのモノとの関係性や、1日の中での見え方を大事にしたかったからです。なので、素地という点で選ばせていただきました。」

「キッチンの塗装を終えたのは住み始めてから2週間程度経ってからで、最初は色も決めていませんでした。賃貸なのですが、設計者が住みながらが施工して、その後も残るものはdiyなのか?もう少し専門的なものなのかな?と思い、D工事と呼ぶことにしました!」

とのこと。
そう、さらっと出てきますが、こんなに自由に改装していて、ここ賃貸物件なんです!

そもそもは、ご夫婦で設計の仕事をしながら、小商いができる場を持って暮らそうと活動を始めたものの、借りようとしていた物件が改修費が高すぎて借りれなかったりと紆余曲折あり。

今回の小商い暮らしの考えに賛同してくれた、このビルの大家である不動産屋さんが物件を貸してくれることになり、改装費の一部も負担してくれたとか。すばらしい!

ちなみに、通常、ビルなどのスケルトンからの店舗工事で、オーナー負担の本体工事をA工事、オーナー指定で費用はテナント負担の設備などの工事をB工事、テナント負担の内装工事をC工事と、費用や責任を区分して、A/B/C工事と呼ぶのです。

通常は、C工事(テナント工事)で仕上がって、入居スタートなのですが、今回のケースは、入居してからの、設計のプロによるさらなる工事ということで、D工事!DIYも掛けててなるほどですね。

ちなみに、キッチンの色は、床を解体した時にでてきた、キッチン周辺の床の黒い模様のような跡をみて、黒に着色にすることを決めたんだとか。ウレタンの黒塗料をDIYで塗っています。

最後は、メタリックな露出の配管に雰囲気を合わせた工業系のシルバーの把手をつけて完成!「フラットレンジフード」のブラックも合わせて採用いただきました。

元々あった古い住居を解体して、床、壁、天井は一部を除いて現状躯体現しに。
本当は、もっとボコボコのボンド跡だったり、謎な汚れ染みがあったのを、見れるレベルの躯体現し状態にまでもってくるって、それはそれで、大変なんですよね。

せっかくなので、別の角度も見てみましょう。
和室部分は、骨格をあえてそのまま残し、襖もオリジナルのまま。中にベッドを置いて寝室に。

さらにその先が、カウンターのワークスペース、トイレやお風呂の水回りになっています。

ここからまた一部が塗装されたり、住みながら手が加えられていくのでしょう。
こんな賃貸の取り組みが増えると、日本の住まいの選択肢も増えて、もっと楽しくなってきますね。

そして、ご夫婦が運営する、1Fの小商いの場もご紹介。
大岡川に面した、角地のいいロケーションです。

こちらもプロに施工を頼んだ後に、建具や外壁の塗装などは、D工事として自分たちで。

「同じマンションの3階住居と1階店舗を、ハナレとして行き来しながら小商い暮らしをしています。シェア店舗のような運営ですが、使う人みんなのが同じような気軽さで使えるハナレとなるように、自由に小商いできる庭のような場所を目指しています!」

とのこと。
店舗は、小商いを実験する日替わりオーナー店舗として運営されていきます。

運営方法は、日頃借りてくれているメンバーと話し合いながら試行錯誤していて、現在は商店街との連携に向けても動き始めているところだとか。

桜の名所としても有名な大岡川。桜の時期も楽しみですね。

赤い電車の京急「弘明寺駅」から弘明寺商店街のアーケードを歩いて5分程。観音橋の手前になります。気になった方は、ぜひ遊びにいってみてください。

小商い暮らしの、事業化に至るまでの経緯、場所探し、工事のことなど、この取り組みの全容を詳しく知りたい方は、ぜひこちらのサイトも合わせてご覧ください。
https://akinai.life/

Photo:トロロスタジオ植村タカシ(DIYの写真のぞく全て)

こちらの家は、toolboxがつくった書籍『マイホーム 自分に素直に暮らしをつくる』の中でも紹介された家になります。

アキナイガーデン

小商いをはじめてみたいという方募集中!詳細は、こちらをご覧ください。

横浜市南区弘明寺町144-1 水谷マンション105

  • 営業時間、定休日などは、日によって異なりますので、最新の営業情報は下記をご覧ください。

紹介している商品

関連する事例記事

男性一人暮らし。ミニマムだけど住む人の個性を滲ませるキッチン
男性一人暮らし。ミニマムだけど住む人の個性を滲ませるキッチン
LDKの印象を左右するキッチンは、システムキッチンほど機能的に優れたものではないけれど、住む人のこだわりをさりげなく感じさせる存在でした。
限られた敷地で実現した、暮らしの機能と余白が織りなす豊かな暮らし
限られた敷地で実現した、暮らしの機能と余白が織りなす豊かな暮らし
キッチンや洗面、洗濯機置き場などの水回りを「ユーティリティ」としてまとめ、機能面積を節約。その分、大きな余白空間を設けることで、暮らしにゆとりと豊かさを生み出した事例です。
思い出残しのワンルーム
思い出残しのワンルーム
ツールボックス工事班が工事を担当し、東京R不動産と共同で企画した賃貸リフォーム事例です。
選び抜いたものだけと暮らす、「余白」を感じる住まい
選び抜いたものだけと暮らす、「余白」を感じる住まい
古い団地に多い「壁式構造」。間取りを変えられない中、暮らしに必要なものを徹底的に見直し、生活のあり方を再編成して生まれたのは、ギャラリーのような住まいでした。