玄関を開けると目の前に広がる、奥のバルコニーまで見通せる開放的な空間。今回ご紹介するのは、仕切りを極力抑えてそれぞれの空間が連なるように計画された、55㎡のワンルームの事例です。
床はフレキシブルボードを用いてすっきりとした印象に、壁に木や躯体現しなどの表情豊かな素材を取り入れ、全体の雰囲気を整えています。
この広い空間をベースに、キッチンやバス・トイレなどの水周りや収納、寝室といった暮らしの機能を部屋として区切ることなく付属させ、ゆるやかにつながるゆったりとしたワンルームに仕上げたそうです。
部屋の中央に設けられたL型のキッチン。キッチンを部屋の隅に設け、ダイニングとリビングを並べて配置するのが一般的ですが、ここではあえてキッチンを部屋の中央に設け、手前側をダイニング、奥側をリビングというふうに、キッチンを挟んでダイニングとリビングがゆるやかに仕切られています。
この配置だったら、配膳も楽ちん。三角形の動線でゆったりスペースを使いながら料理ができるのも、使い勝手が良さそうです。
キッチンの壁はパネルなどを貼らず、躯体現しの表情をそのまま生かしています。袖壁や天板下の造作に木を取り入れ、印象を和らげているからか、全面躯体現しでも冷たい印象を感じません。
デッドスペースになりやすいと言われるコーナー部分は、トースターなどの家電置き場に。カウンター背面は備え付けのソファスペースになっているので、角の部分はサイドテーブルとしても活躍しそう。
間仕切りは全て梁下の高さに合わせることで圧迫感を軽減。壁というよりは本棚や収納といった必要な要素を仕切りに見立てることで、効率よく空間を仕切っています。
先程の写真でちらっと見えていた、本棚を兼ねた間仕切りの後ろに配置されたWIC。建具で閉じていないにも関わらず、リビングからの視線がうまく遮られています。
WICの背面、ダイニング側の本棚裏には寝室があります。
ラワン材で作られたヘッドボードには、グリーンを飾ったり、お気に入りの本を置いてみたり。あるだけで暮らしぶりをちょっと豊かにしてくれる存在です。小ぶりな照明がアクセントになっていい感じ。
WICの反対側は洗面スペースになっています。
ドレッサーとしても使えるよう、天板は長めに設置。光が入るので、朝の身支度時間も気持ちよく過ごせそう。
収納を設けず、スッキリ納めることで、お気に入りの収納ボックスやかごを使って自分らしいインテリアを楽しむ余白が生まれています。
玄関脇にあったユニークな仕掛け。
躯体現しの崩れた箇所に箱を挿入し、簡易的なディスプレイスペースが設けられていました。マイナスと思われる要素ですら、楽しく暮らしに取り込んでしまう。おおらかに暮らしを楽しむ様子が感じられる微笑ましい一コマ。
部屋としてしっかりと区切ることをせず、視覚的な効果を利用してそれぞれの場をゆるーくゾーニングした今回の事例。機能がゆるやかに切り替わるひとつづきの空間は、約55平米のお部屋ながら、奥行きある景色のおかげで、実際の平米数以上の広さを感じます。
スタジオキチ合同会社
一人ひとり違うライフスタイルから、その人にとって魅力的な住まい方を、寄り添いながら一緒に探してくれる。
建築デザイン・空間デザインの設計・監修、インテリアコーディネートを行う福岡の設計事務所です。