購入の決め手となった海が一望できるリビング。(撮影:いざきあつし)

築古物件には、手頃な価格であることや独特の趣が得られるなど、多くの魅力があります。しかし、それと同時に、見た目が古臭かったり、くたびれている部分があったり、機能的な不便さに悩むことも少なくありません。

そんな時に、リフォームをすることでその課題を解決していこうと考えると思いますが、リフォームも何かを新しく取り替えようとすると費用がかかり、なかなか大変。今回は、壁やパーツはもちろん、キッチン、タイル、建具までも、DIYで“塗る”ことで既存を生かしたリフォームの事例をご紹介します。

事例写真をくださったのは以前からtoolboxをよくお使いいただいているアサクラさん

東京・世田谷に賃貸マンションを持ち、自分でDIYもしながら管理をされている大家さんです。

今回写真をいただいたのは築50年ほどの熱海のリゾートマンション。アサクラさんが購入した時にはリフォームはされておらず、リビングの一部が解体済みの状態だったそう。人によっては「廃墟みたい」と思える状況でしたが、アサクラさんにとっては「DIYしやすそう!」とプラスに捉えて購入を決意。

大事なところはプロの手も借りたそうですが、ほぼDIYで仕上げていきました。

間取りは購入時のまま変えないことに。およそ50平米の1LDKです。

躯体壁からデザインテイストを決める

それぞれ塗装した部分を見ていきたいと思いますが、その前に。リフォームするにあたり、アサクラさんがどのようにしてデザインテイストを決めていったのかを紹介したいと思います。

今回キーになったのは、購入時から剥き出しだったというリビングのこちらの壁。

この躯体現しの壁をそのまま生かすことを決め、全体的にグレイッシュでラフな雰囲気を目指すことに。

塗ると一言で言っても色に悩み出すとなかなか大変です。最初に大きい方向性を決めてしまうことで、ブレることなく進めることができるのだなと思いました。

「ザ・昭和」なキッチンをアイアンに塗ってみる

まず最初に紹介するのはみなさん気になるであろうキッチン。

before:トビラにプリントされたレトロな柄と汚れが合わさって哀愁が漂います。

購入当時は「ザ・昭和」で、端的に言えばオンボロなキッチンが設置されていましたが、塗ることでこうなりました。

after:色や質感以外の変化では、ドアも全て外されてオープンなキッチンに。

なんということでしょう。オンボロだったキッチンの面影を全く感じさせません。

それもそのはず、キッチン本体や吊戸棚、うっすらピンクのタイルまで、全て『アイアン塗料』の「シルバーグレー」で塗装していただいたとのこと。

アイアン塗料をここまで塗り倒していただけるとは!

ちなみに、アイアン塗料は基本的には下地の処理が必要ない塗料ですが、タイルは基本的に塗装に向かない素材のため、タイルの塗装だけは、表面にやすりをかけたりプライマーを塗って下地処置を行ったそうです。

また、水はねや油汚れがつきやすいキッチンの前のメインの壁にだけは新しいタイルを重ね張りしているそうです。

選んでいただいたのは『フォグタイル』の「クラウドグレー」。

機能的にも安心して使えるように仕上げられているのが嬉しいポイントですね。

そんな気になる機能面、キッチンにアイアン塗料を塗った状態での使い心地についてリアルなところも聞いてみました。

 

アサクラさん
「汚れが付いても拭けばちゃんと落ちます。ただ、塗料を刷毛で塗っているので塗装面には若干のムラがあり、手触りとしては少々のざらつきを感じます。ステンレスや人工大理石の天板とくらべると、やや拭きにくいのは事実です。

具体的に言うと、濡れた布巾などで拭くのならば問題はないけれど、アルコールスプレーをした後にキッチンペーパーなどで強く拭こうとすると、塗膜のムラのざらつきに引っかかりペーパーが細かく削れたりちぎれてしまうことがあります。

個人的には気になりませんが、いわゆる使いやすいキッチンと同じ拭きやすさを求めるとガッカリするでしょうね。

それと、熱したケトルを直接置いたら塗膜の一部がケトルの底に張り付いて少しだけ剥がれてしまいました。このあたりも注意したほうがいいかもしれません。でも、個人的には、また塗り直せばいいと思うので気にしていません。

結論としては、正規のキッチン素材とくらべるとやや劣るのは事実だけれど、アイアン塗料で塗ったキッチンも十分実用に耐える、という感じでしょうか。キッチン全体を自分好みの色に塗れてアレンジできる利点にとても満足しているので、塗って良かったと思っています。

キッチンに何を求めるか、そこを整理したうえで採用するのが大事ですね」

 

とのこと。とっても参考になります!参考になりすぎてメールでいただいた内容をほぼそのまま掲載させていただきました。ありがとうございますアサクラさん!

他にも建具やブレーカー、パーツもアイアンに塗装

キッチン以外にもたくさんの場所でアイアン塗料を使っていただいたので紹介します。

正面のリビングに向かうドア。塗る前はツヤツヤとした光沢があるドアだったそうですがアイアン塗料なら下地処理なしで塗れたとのこと。さすがアイアン塗料!

玄関ドア。マンションだと基本的に手を加えることができない玄関ドアですが、内側だけなら塗装することができるんです。

浴室に向かう引き戸の枠にも塗装。こちら、元は木製の引き戸だったんだとか。

浴室に向かう引き戸の寄り。塗料の色は基本的にグレーで統一するなか、ここだけは浴室のタイルに合わせてブラックを選択しているそうです。

玄関からリビングに続くドアや、玄関ドアの“内側”、浴室の引き戸の枠やリビングの窓枠にもアイアン塗料を塗っていただきました。

ちなみに、その引き戸を開けると広がる風景はこちら!

リビングと同じく眺望抜群!海の明るさと黒のタイルのコントラストが気持ちよく、ついつい長湯してしまいそうになるお風呂です。

シャワー近くに付けられたフックや石鹸置きには『船舶サニタリーパーツ』や『船舶ハードウェア』がキラリ。

他には、もともと洗面台だったというキャビネットのリメイクにも使っていただきました。

どこに塗ったのかな?と、よくよく見てみると、取っ手部分がいい質感!

こちらにアイアン塗料を塗っていただきました。

細かなところですが、細部まで自分の好きな質感、色で仕上げられていると、使う頻度や大事に使おうと思う気持ちも高まる気がします。

最後は、意外と気になっている人が多いだろう、ブレーカーやスイッチなどの設備周りを塗ったり隠したりするアイデア。

こちらも他の場所と同じくアイアン塗料のシルバーグレーで塗装されています。スイッチはベニヤでカバーを作り、その上に塗装を施したそうです。

手を抜きがちなところかもしれませんが、こういうところにこだわりを持てると空間ってグンとよくなる気がしますよね。

私も常々自宅のスイッチを隠してしまいたいと思っているので、アイアン塗料で塗るのは真似したいアイデアです。他の場所と同じ塗料で仕上げていることで統一感もでますね。

塗ることで生まれ変わる

今回の記事では、アイアン塗料を塗った場所に限定して紹介してきましたが、この家ではコンクリート風になる塗料や珪藻土塗料など、グレー系の色で統一しながら他にも塗って仕上げた場所がたくさんあります。

同じ色味で揃えるということは守りながらも、いろいろな質感の塗料で塗ることで、まとまりと単調になりすぎない動きも生まれています。

“塗る”ことのポテンシャルの高さを感じられた事例だったのではないでしょうか?

既存を活かしたDIYリフォームを検討中の方は、良かったら参考にしてみてください。

 

アイアン塗料の塗り方について知りたい方は下記の記事がおすすめです。

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アサクラ

東京にある賃貸マンションの管理&経営をしつつ、東京の山奥にある山小屋をDIYで直したり、自分で手も動かしてしまう多才な方。
ブログや「ESSE online」では、賃貸の「現実」やリノベのアイデアなど、大家ならではの視点でコラムを書いています。

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