よく「お家の顔」と言われるのは玄関ですが、それと同じくらい廊下も大事なポイントだと思うんです。玄関扉を開けたら真っ先に目線が行く廊下。どの部屋に行くにもまず足を踏み入れる廊下。実は家のどこよりも、行き来が頻繁な場所かもしれません。

今回はそんな廊下にちょっと注目してお家を見ていきましょう。

「ただいま」と玄関扉を開けると飛び込んでくるのはこの景色。奥にある窓からの光が廊下まで届き、玄関からリビングまで視界がすーっと抜けていく、とても明るく開放的な空間です。

というのも、リビングと廊下の間にドアも垂れ壁もないからなんです。

実はこのお家、ドアがあるのはトイレと洗面のみ(!)。

マンションの廊下というと、両側にドアが並んでいる場合が多いと思うのですが、ドアを無くすことで狭い廊下でも抜け感が生まれ、圧迫感を感じにくくなっています。

そして壁面には『ミルクガラス照明 』の楕円が連なっています。直線的でスッキリとした空間の中で、ぽってりとしたフォルムがアクセントになっていて、廊下全体にやわらかさが生まれます。

疲れて帰ってきた夜にも、乳白ガラスのやわらかなあかりがリビングまでやさしく導いてくれます。

あかりに導かれた先にあるのは大きなキッチンのあるリビング。

こちらは奥様こだわりのステンレスのオーダーキッチン。光沢感の抑えられた質感が、フローリングや家具の木の温かみのある雰囲気とうまく馴染んでいます。空間を引き締めながらもなんだかあたたかい、心地よいグッドなバランス。

食洗機やコンロ、水栓もこだわり抜いて選んだもの。仕事の後でも進んで料理がしたくなるような素敵なキッチンです。

そんなキッチンの上に浮かんでいるのは『フラットレンジフード』。オールステンレスのスッキリとしたキッチンと軽やかなフォルムのフラットレンジフードが相性抜群です。

キッチンの奥にはパントリーがあります。

廊下側からもアクセスできるようになっていて、ここにも扉はないので重い買い物袋を持って帰ってきたときにも便利ですね。

料理で使ったキッチンツールたちは綺麗に洗って、『ハンガーバー』にかけて整理整頓。

整然と並べられた様は見た目も気持ちもスッキリとさせてくれます。

お風呂に入ったあとはモルタル造りのベンチでひとやすみ。

「ここでぼーっとしたり、お風呂上がりに涼んだり、窓を開けていると風が入ってきて気持ちがいい」と奥様。

キッチン横をダイニングではなく、くつろぐスペースとしたことで、こんなに贅沢な時間が過ごせるのですね。ただのフリースペースではなく、あえてベンチを造り付けにしたことで、ここで本を読んだり、植物を育てたり、テーブルを持ってきてベンチとして使ったりと色々なアクションが生まれるのではないかと思います。

リビングのソファ以外にも、こういった「くつろぐための居場所」がお家の中にあると、普段の暮らしがさらに豊かになるのではないでしょうか。

1日の終わりには廊下を通って寝室へ。

コンパクトな空間でおこもり感はありつつも、寝室のドアも垂れ壁もないので開放感があります。

そして私のときめきポイントが、この寝室の壁のスリット。スリットの先には玄関横にある土間スペースが見えます。

切り抜かれた景色で壁を飾る、この密やかな遊び心に惹かれます。

また、窓とまではいかないこの隙間によって、部屋の向こうの空間が感じられて抜け感が生まれる効果もあります。そうすることでコンパクトな空間でも圧迫感を感じづらくなっています。

お部屋はもちろん、そこに繋がる廊下の心地よさ、使い勝手まで考えていけると、毎日の生活がちょっとご機嫌になって、お家での暮らし全体がもっと豊かなものになるのではないかと思うんです。

たかが廊下……されど廊下……。

改めて廊下に目を向けてみようかな、そう思わせてくれるような素敵な事例の紹介でした。

ゼロリノベ(株式会社グルーブエージェント)

「大人を自由にする住まい」をコンセプトに、家を買うことで自由になる「家のさがし方」「家のつくり方」を提案するリノベーション会社。
東京・神奈川・千葉・埼玉を中心に、資産性のある中古マンションの「物件さがし」から「リノベーションの設計・施工」までワンストップで提供しています。

テキスト:しもむら

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