良好な自然景観を守るために定められた風致地区の規制のため、壁面を後退させて緑地面積や駐車スペースを確保。敷地の奥側には採光通風のための引きをとり、残った中央に13坪の3層の箱が立っています。
玄関は表からは見えない建物の左側面に。水平に窓ガラスが並ぶ住宅っぽい雰囲気を感じさせない箱型の建物の中には、一体どんな住まいが広がっているのでしょうか。気になりますよね?早速ご紹介していきます。
建物の内部に足を踏み入れると現れる、コンクリートの厚板で形作られた骨格。家の中心にコンクリートで囲まれたコアを持ち、その周りを取り囲む回廊状の縁側のような空間とで構成された住まいです。
このコアが躯体となり、建物の構造を支えています。コンクリートの量感と肌理をインテリアで楽しみたいという思いから躯体は現しに。コアという言葉の響き通り、力強さを感じる仕上げです。
ワンルームとしても使える13坪をあえて数枚の壁で間仕切ることで、仕切られた場所から繋がる次の場所が見え隠れするように狙っています。
少し薄暗く奥まったコアから、明るい縁側とその先の庭を望む。見通しがききつつも隠れられる空間は、なんだかほっとする居心地の良さを感じます。コア内部の照明は低めにすることで、空間に陰影が生まれ、落ち着いた雰囲気が作り出されています。
ダイニングキッチンに繋がるリビングスペース。こじんまりした空間ながら、至るところに抜けが感じられるため、圧迫感は感じません。小さな椅子を置いてみたり、床に座って壁にもたれてみたり。ちょっとしたスペースがアイデア次第で特等席になるような。そんな楽しい可能性を秘めています。
小さな場の連なりとなった、13坪の間取り。暮らしながら使いながら、自分だけのとっておきの場所がいくつも生まれ、どんどん自分たちに馴染んでいく。そんな可能性を秘めた、素敵なお宅の事例です。
矢部達也建築設計事務所
大阪市街の古ビルと和歌山日高町の海辺の平屋、リノベーションしたふたつの拠点で活動中。暮らしやすさ、働きやすさ、居心地のよさ、屋外のきもちよさなどを大切に、これまでの価値観を問い直し、大胆な構成と繊細なディテールをもつ空間づくりをご提案いたします。住宅、リノベーション、集合住宅、店舗、オフィス、クリニックなど。土地探しのお手伝いも承ります。