シンプルなスタイルほど、一つ一つの素材の取り入れ方によって空間の印象が大きく変わる気がします。
今回ご紹介するのは、シンプルな空間ながら、躯体表しや木、白壁など、それぞれのコントラストが絶妙に溶け合い活かされた賃貸マンションの事例です。
モルタル仕上げの床、躯体表しの梁柱、天井や配線ダクトまでグレイッシュなトーンでまとめられた落ち着いた雰囲気のリビングダイニング。家具の木や植物のグリーンが、すっきりした空間によく映えます。
景色を一望できる物件の特徴を活かすため、床を下げて天井をなくし空間に広がりを持たせると共に、室内のトーンを落とすことで、自然と窓の外の眺望に意識が向くよう狙ったのだそう。
そんな空間に採用されたのは『木製ミニマルキッチン』。家具のような雰囲気を纏ったキッチンが、シャープな空間にほんのり温かみを添えています。レンジフードはシルバーにして壁と同化、その分木の存在感が際立ちます。
キッチンのサイドには備え付けのキャビネットが設置されています。キャビネットの面材をグレーに化粧することで、キッチンの木とのコントラストが一層映える仕上がりに。
LDK以外は床が一段あがり、仕上げには打って変わって表情豊かなパーティクルボードが使われています。安価でありながら、遮音性と断熱性に優れたエコな材。床だけでなく、天井も合わせて切り替えられ、ひと続きの空間ながら左右で雰囲気が一変しています。
家具が手がかりとなって、この場での暮らしがぼんやりと浮かび上がり「自分ならどう使うかな?」と自然と妄想が広がります。
空間全体を同じ雰囲気に統一するのではなく、印象の異なる素材を対に配置することで、空間にコントラストが生まれ、より洗練された印象に仕上がっています。
素材の取り入れ方によって、空間に変化や動きをつけることができる。その見本のような素敵な事例です。
(撮影:jumpei suzuki)
HIGASHIYAMA STUDIO
東京と名古屋を拠点に活動する設計事務所です。建築に潜む「記憶の器」のような性質、時間的な射程を大切にしながら、様々なアプローチから条件を最大化する方法を丁寧に探ることで、そこにしかない、そこにあるべき空間を提案します。
建築設計事務所と併行し建築写真家としても活動しています。
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