引き戸が何枚も連装され、奥行きが深くなる町家づくり。
玄関から見通せるその眺めは、まさしく町家の風景を思い出させてくれます。

昔ながらの趣や味わいを残し、この通り土間のどこからでもLDKへアクセスできる間取りになっています。
既存の建具は古くなり利用できなかったので、お施主様と一緒にここにはまる古建具を選んだのだそう。

引き戸を開けて中に入ると、オープン階段を隔てるように、リビングとダイニングキッチンが配置されています。
お部屋の中央にアイアンの階段が入ることで、古さの中にもすっきりとした新しさが加わった印象を与えてくれます。
オープン階段を用いることでLDKの広がりを保ちつつ緩やかに空間を仕切り、さらに、階段の天井は吹き抜けにし、1Fと2Fが広々と繋がる空間にしています。

こちらがキッチンスペースです。
古家具に合わせた深色の木のキャビネットを合わせた造作キッチンを設置。
障子の引き戸を開けると解放的な視界になり、腰を掛けながらお茶をしたりできる、そんな連続性をもったスペースです。

ダウンライトが照らす暗めの空間に、無骨なスチールラックがちょうど良い存在感に。ラックの網目模様の影が壁にも落ち、模様を作っています。

収納もたっぷりあるので、お気に入りのお皿など飾るのも良さそう。
スペースに余裕があるからこそ、たくさんの品数をお料理しながら、自分の時間をゆったりと楽しめる、そんな空間ですね。

リビングダイニングに走る梁がまた築112年の趣を物語っています。
昔を引き継ぎながら、今暮らす家を作っていく。
グレイッシュな壁、新設したキッチンや収納、その中に所々残される昔の面影が、落ち着く、という心地よさを作り出す素敵な事例でした。

株式会社green建築工房

無垢や木の質感を感じる家づくりを得意とし、大阪・枚方を中心にリノベーション・注文住宅・店舗デザインを提案しているデザイン集団です。

紹介している商品

テキスト:小尾

関連する事例記事

男性一人暮らし。ミニマムだけど住む人の個性を滲ませるキッチン
男性一人暮らし。ミニマムだけど住む人の個性を滲ませるキッチン
LDKの印象を左右するキッチンは、システムキッチンほど機能的に優れたものではないけれど、住む人のこだわりをさりげなく感じさせる存在でした。
限られた敷地で実現した、暮らしの機能と余白が織りなす豊かな暮らし
限られた敷地で実現した、暮らしの機能と余白が織りなす豊かな暮らし
キッチンや洗面、洗濯機置き場などの水回りを「ユーティリティ」としてまとめ、機能面積を節約。その分、大きな余白空間を設けることで、暮らしにゆとりと豊かさを生み出した事例です。
思い出残しのワンルーム
思い出残しのワンルーム
ツールボックス工事班が工事を担当し、東京R不動産と共同で企画した賃貸リフォーム事例です。
選び抜いたものだけと暮らす、「余白」を感じる住まい
選び抜いたものだけと暮らす、「余白」を感じる住まい
古い団地に多い「壁式構造」。間取りを変えられない中、暮らしに必要なものを徹底的に見直し、生活のあり方を再編成して生まれたのは、ギャラリーのような住まいでした。