玄関を入るとすぐそこにはキッチンダイニング。家に帰ってくると必ずこの空間を通ってそれぞれの部屋に向かうようになっており、家族の和や絆といったものを自然と育めるような工夫が間取りに取り込まれています。
扉を開ければ、目の前の通りや向かいの飲食店まで生活空間の一部として取り入れることができる、という街との距離感の近さの捉え方も面白いところ。
振り返ると反対側にはどん!と大きな黒い箱。実はこれ、大きなロール紙が組み込まれたお絵描きコーナーで、裏側はキッチン収納となっています。子供達の遊び場として、収納として、さらには部屋の間仕切りとして、いくつもの役割を兼ね備えた黒い箱は空間の使い方をより豊かにしてくれます。
そして奥に見えていたのは1階から4階までを繋ぐまわり階段。
床にはサイザルカーペットが敷き詰められ、柱分の奥行きを活かした折りたたみ式のベンチや飾り棚も設置。
階段をただの通路として使うのでなく、居場所としても有効活用。ここで読書をしていると通りかかった家族と「何を読んでいるの?」と会話が生まれたり、本のことや学校のことなどそのままここで話し込んでしまったり……。日常の中で自然と家族それぞれの暮らしが交錯する、そんな居場所になっています。
ランドリースペースは洗面台から洗面ボウル、水栓、タオル掛けまでブラックで統一。ワントーンでまとめられた洗面空間は設備感が緩和され、ひとつの家具のように部屋に馴染んでいますね。
トイレの手洗いスペースには『ウェルラウンドシンク』が使われています。足元が開けているので広さを感じやすく、手洗いソープなどを置けるちょっとしたスペースもあるので、こういったコンパクトな洗面スペースにも相性良しです。
壁にはグリーンのアクセントカラーを取り入れることで他の空間とは違った居心地をつくってくれます。
3階にあるのはリビング兼ワークスペースです。天井は断熱材に塗装をしてそのまま見せた仕上げ。壁、床、天井のトーンはまとめつつも質感に変化をつけるだけで空間に表情が生まれています。
階段を登りきった1畳ほどの屋根裏的空間はキッズスペースとして活用。床材をオークのフローリングに変えることで下の階とはまた違ったあたたかな雰囲気。壁で仕切らずとも床材を切り替えるだけで、ひとつの部屋として自然と意識が切り替わるような気がします。
コンパクトでも空間の捉え方を少し変えてみるだけで、暮らしは豊かに広がっていく!むしろ狭いからこそ工夫のしがいがあって、楽しい居場所をたくさんつくれるのではないかと思うのです。狭さに対する考え方も変化させてくれる素敵な事例のご紹介でした。
note architects
鎌松 亮が主宰する設計事務所。「環境的なもの」「社会的なもの」「お客様に関わるもの」建築における3つの大きな文脈を読み解き、本質を形にすることで、“その場所だからできる建築”の実現を目指しています。