今回の舞台は25年前に建築家のお父様が建てられた家。
建築当初は1階に書斎があり、居住空間である2階も間仕切りのない開放的なものでした。その後、1階を賃貸仕様に変え2階に自分達用のお風呂など水回りを新設して運用をされていましたが、お父様から子世代へと受け継がれ新たな家庭が築かれるようになってから、手狭に感じたり不便な面が見えてきたそう。
建て替えも選択肢にあった中、できる限り現状の雰囲気を残して長く暮らしたいという想いから、初期の設計を踏襲するような形でリフォームを進めていきました。
まずは居住空間である2階から見ていきます。
元々は洗濯機や風呂場などの水回りを含めた生活空間が全て2階に集約しており、収納や広さが不足気味でした。そこで、賃貸仕様の1階に水回り機能を移設して、設計当初のオープンな間取りに戻していきながら収納を増やすような改装を行うことに決定。
TV前のスペースは吹き抜けになっていましたが、床を貼り伸ばしてリビングを拡張し、壁面には『ウォールディスプレイパーツ』で可動収納棚を作りました。
特に冬場に寒さを感じやすい吹き抜けのあるリビングには床暖房を新設。3階でも採用されていたバーチの無垢フローリングを踏襲して、床も全体的に張り替えました。
無垢の足触りが良く、冬でもぬくぬくと過ごせる居心地のよいリビングに生まれ変わりました。
お風呂場が無くなったことで生まれた壁面にも、「ウォールディスプレイパーツ」で可動棚を作り収納を担保。最下段は奥行き浅めのデスク天板としても使えます。
家族みんなで使う洗面は、利便性から2階にも残しました。『洗面SETUP-01』を応用し、手元と足元に棚を増やすことで使い勝手もアップ。床に貼ったバーチのフローリングと素材感を合わせているので、さっぱりとまとまっています。
雰囲気たっぷりの窓から差し込む朝日が、お似合いの洗面空間です。
たっぷりとしたステンレスの天板がまるで厨房のようなキッチンは、レイアウトはそのままに本体を交換しアップデート。
『ステンレスフレームキッチン』をベースに、『オーダーレンジフード』をサイズオーダーして壁にピッタリと納めました。
対面に構えるキッチンカウンターは『木製キッチンカウンター』と『オーダー吊り戸棚』のバーチを採用。壁には『ピクセルタイル』のホワイトを貼り「洗面SETUP-01」の雰囲気と合うようにまとめています。
潔くステンレスで仕上げられたキッチンですが、経年変化した飴色の木やバーチの柔らかい質感などのバランスが良く、全体的に温かみが感じられます。
続いて1階の水回り空間へ。
1階はRCの造りなので、コンクリート現しの天井がなめらかに続き、どことなく閑静な雰囲気が漂います。2階とはまた違った趣に心が惹かれるのは私だけではないはず……!
洗濯設備のレイアウトは次のプロセスへと進みやすいように、シンク→洗濯機→乾燥機の順に配置してみました。乾燥機の奥のオープンスペースを家事室として使えば、もっと洗濯が捗りそうです。
洗面台のライニングには『古窯70角タイル』のアクアブルーをチョイス。『メタルフレームミラー』のアルミや『ボールライト』のブラック、水栓はタフに使える『ワーカーズ水栓』を組み合わせて、爽やかで清潔感のある仕立てに。
実験用シンクはお手入れもしやすく、汚れた靴なんかもガシガシ洗えそう。
床にはサイザルを貼っています。天然の麻素材なので、なんと言っても足裏の踏み心地の良さが特徴。個人的にいつか自宅に取り入れてみたい素材のひとつです。
こちらは玄関から水回りに通じる廊下スペース。玄関近くにオープンクローゼットがあると、帰ってきてすぐにリュックやコートがかけられて便利です。
廊下の明かりは『モデストレセップ』Mサイズのグレーを壁付けにして、空間に馴染ませました。
長い時間を過ごした家には、言葉では語れない無言の奥深さが熟成されているような気がします。それはきっと、そこで過ごした時間が家の記憶となり根付いていくからだと思うのです。
各所に残した家の記憶の断片と共に、これからの家族の思い出を紡いでいく。少しずつ手が加わり変化しながら、また新たな記憶が生まれ、ゆっくりと家に溶け込んでいくのでしょう。
世代を超えて住み継いでいく、そんな二世代目のリフォームの事例でした。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。
住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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