眼下に広がる建物と木々。人々が動いている街の風景はどれだけでも飽きずに眺めていられるし、なんだかほっとします。
今回紹介するのは、そんな眺望を存分に味わえる、都心の大きな公園に面したマンションの一室。約60㎡程のスペースの中に、キッチン・ダイニング・ソファーのあるリビングと寝室、ご夫婦それぞれのワークスペースがつくられています。
写真を見て伝わるでしょうか?キッチンカウンターやダイニングテーブルがなんだか……傾いてる?
間取り図を見て納得!こちらのお家、少し珍しい台形の間取りなんです。
さらに中央に太い梁が通っていて、リノベーション前は、梁を堺にスペースが分断されていたそう。この間取りの特徴を活かし、半分をオープンなLDK・もう片側を寝室や書斎といった個の空間としてレイアウトされています。
公園に面していることの開放感を感じられるようにと、各スペースは腰高の壁で仕切られています。視界を遮ることなく、家の中どこにいても外の景色が飛び込んでくるつくりになっているんです。
腰壁はスペースを仕切るだけでなく、収納棚としての役割も。オープンな間取りですが必要な場所に物を置いたり、コレクションを飾ったりできる配慮がされています。角がアールになった家具のような見た目もいいですね。
玄関からもスコーン!と、窓外に広がる青空と緑が望めます。
こちらは造作されたソファスペース。座面が広くフラットなので、ちょっと寝っ転がったり、足を伸ばしてリラックスできそう。
足元は『チェッカーパーケット』と、掃き出し窓側に赤茶色のタイルが貼られています。
どちらも、昔学校で目にしたことあるような、懐かしさを感じる素材たち。西日と合わさると放課後を思い出す……ちょっとノスタルジックな気持ちに浸れそうです。
ソファスペースの正面、少し奥まったインナーテラスのような場所に『メタルラウンジライト』と『ランドリーハンガーパイプ』を見つけました。
赤茶色のタイルに真鍮の素材がよく似合っています。そしてそんな雰囲気を邪魔することなくひっそりと存在するハンガーパイプ。生活に必要な部屋干しスペースを確保しながら、景観も考えられた計画です。
実は「ランドリーハンガーパイプ」はもう一箇所あることに気づきましたでしょうか?
キッチンにつくった洗濯機置き場の頭上に溶け込んでおりました。ハンガーをかけておいたり、洗濯に使うだけでなく、この配置なら洗ったふきんも干せたりと重宝しそうです。
大きな窓に面した気持ちの良いキッチン。キッチン本体は『オーダーキッチン天板』を使って造作しています。背面のタイルにゆらゆらと、外の光が反射しているのが印象的です。
続いて、こちらが寝室からの眺め。
プライベートな寝室もまた、公園に向いて開けたスペースに!『木製ガラス引き戸』が光と景色を届けてくれます。
でも休日に思い切り朝寝坊したいなど、閉じたい時はどうするんだろう……?
この通り!障子で仕切ることができます。
天井にはカーテンレールも仕込まれていました。
リビングから見たところ。壁や扉とも違い、和紙で仕切ると光を柔らかく見せてくれます。
こちらの障子は寝室側から見ても、リビング側から見ても同じ見た目になっていますが、両面に桟がある構造にして、表裏ができないようにしているんだそう。
ところで障子の間にある二つの扉は……?
ご夫婦それぞれの書斎へ繋がる扉でした。
書斎で仕事をする時は障子を開放して光を採り入れて、作業に集中したい時や、夜寝る前に閉じれば個室として使えるように。
眺望を堪能する開放感と囲われた安心感、どちらも自在に選びとれる間仕切りの工夫です。
最後に夜の雰囲気もお届けします。
一箇所で全体を照らすのではなく、必要な場所にぽつぽつと配置されたあかり。夕方から夜にかけて徐々に暗くなっていく外の環境に合わせて、少しずつ手元に明かりを落としていく……なんて過ごし方が似合いそう。そんな風に、必要以上に室内を明るくしないことで、外の夜景にも意識が向くような気がします。
公園に向けて開く家。
眺望の良さを堪能するレイアウトだけでなく、開放感と囲われた時の安堵感が選べる仕切り方の工夫や、昼から夜へ移りゆく時間を楽しむ照明計画など、その時々の気分で過ごし方を選択できる仕掛けが詰まった事例でした。
Camp Design inc.
建築家・藤田雄介による住宅・集合住宅・商業施設・オフィスの設計、家具デザイン・会場構成・インスタレーションなどを手掛ける設計事務所です。
「木製ガラス引き戸」「木のつまみ」「木のドアノブ」などの開発パートナーです。