物が少なくてすっきり片付いたお家にお邪魔すると、「綺麗にしていてすごい!」と思うのですが、そうした家の住まい手のほとんどがおっしゃるのが、「掃除や片付けが苦手」という言葉。「だから、掃除や片付けが楽な家をつくったんです」と。横浜の関内にあるマンションをリノベーションしたHさんもそんな一人。コンクリートと木とステンレス、異素材のコントラストが際立つミニマルな空間で、愛猫との暮らしを満喫しています。

「掃除がしやすい」「愛猫と清潔に暮らせる」「自宅で快適に仕事ができる」ことを大事にしてリノベーションしたというHさんの家。ヘリンボーンフローリングが印象的なLDKには、キッチンよりも長いカウンターデスクが。仕事用とプライベート用のPCを並べていて、イスをサッと横にスライドさせるだけで公私をスイッチできるようになっています。

コンセントはデスクのすぐ下に取り付けて、ケーブルトレーも設置。ケーブルがごちゃつきがちなデスクをすっきり見せつつ、ケーブルまわりに埃をたまりにくくする工夫です。猫ちゃんのイタズラ対策にもなっているそう。

壁の照明には、『工業系レセップ』を使っていただきました。

リビングダイニングを広く使うために、キッチンは壁付けを選択。キャビネットはIKEAの既製品を使ってコストダウン、そこへ『把手の金物』とオーダー品の天板を組み合わせて、キッチンをつくりました。水栓は『ハンドホース水栓』のステンレス(※販売終了)、『薄型レンジフード』もステンレス製で揃えたキッチンは、ステンレスの塊のよう。食洗機は「自分の生活に要らない」とつけず、キッチンとしての最低限の機能と収納を備えた、ミニマルな仕様にしています。

極力リビングダイニングに面積を割きたいと、寝室はダブルベッドが置ける最低限のサイズに。床には『スクールパーケット』を貼って、シンプルな空間の彩りにしています。ベッドサイドには何も置かず、ベッドの上に『モデストレセップ』を2灯、枕元に『トグルスイッチ』を設えました。寝床から起き上がらずに明かりを操作できるのがいいですね。

玄関から寝室、クローゼットを経由してLDKへ。こちらの壁にも『工業系レセップ』と『トグルスイッチ』を発見。

寝室にはクローゼットを設けず、寝室の出入り口とLDKを繋ぐ廊下に造作。クローゼットの引き戸に『木製パインドア ルーバードア』を採用したのは、湿気対策。本物の木でつくられたドアが、廊下の突き当たりの風景を心地良いものにしています。

ミルクガラス照明』と『壁付けセパレート混合水栓』(※旧仕様)、『トグルスイッチ』を取り入れた洗面スペースにも、掃除や片付けが楽な暮らしのヒントがありました。まずはモルタルで仕上げられたフロート型の洗面台。足元があいているので、お掃除ワイパーやお掃除ロボットを使う時も楽々です。

洗面台の下のステンレスパイプもポイント。タオル以外にも、ドライヤーを引っ掛けたり、布をかけて洗面下を丸ごと隠してしまったり。意外と物が増えがちな洗面スペースをすっきり保つことができます。

洗濯機は洗面の横には置かず、廊下にあるクローゼットの隣にレイアウト。LDKからも脱衣所を兼ねる洗面スペースからもアクセスしやすい配置になっています。一人暮らしのHさん、洗面脱衣室には仕切りの扉を付けず、オープンにしています。閉じないので湿気がこもらないのはいいですね。

タンクレストイレを選んだトイレ空間もシンプル。壁上の棚には『棚受け金物』を使っていただきました。キッチンや洗面同様、ステンレスをキーマテリアルにした空間づくり。「素材を揃える」ということもすっきりした空間づくりに欠かせないポイントです。

「キレイ好き、整理整頓が好きというわけではなく、ラクをしたいだけ」と話すHさん。掃除をしたくないからと、浴室はバスタブなしのシャワーのみ!「バスタブに入った記憶が10年くらいない」そうで、使わないのに掃除をしなければならないストレスから脱するべく、この選択をしたそうです。

バスタブ以外にも、できる限り余計なモノをなくしたというHさん。カーテンレールも「カーテンを二枚かけない」という理由からシングルレールを採用しました。確かに、なんとなくダブルレールが一般的になっていますが、暗くしたい寝室と違ってリビングなどは目隠しができるレースカーテンだけで十分なこともありますよね。

他にも、段差に埃が溜まるのを避けるために巾木をつけなかったり、上り框をつくらずスロープで切り替えたり。「普通はこうだから」に囚われず、「自分にとって必要か不必要か」を見極める空間づくりを徹底しました。

そんなHさんの暮らしの中でマストだったのが、猫への配慮。この家に住んでから飼い始めたそうで、物件探しの時はペット可に絞って探しました。人用トイレの隣には、猫用トイレを設置。トイレ側に臭いを吸い込む吸気口もつくられています。ペットと暮らす場合、あらかじめトイレ置き場を決めておくことって結構重要ですよね。上は収納になっていて、猫砂置き場も確保されています。

傘や小物を吊るす用に『ハンガーバー』も設置されていました。

猫の飛び出し防止に玄関と生活空間の間につけたドアも、猫との暮らしに欠かせなかったもの。「猫に、ガラス窓から顔を出してほしい」という願いから、大きなガラス窓が入った『木製パインドア ガラスドア』を採用しました。現在はその願い通り、外出から帰った時には愛猫が顔を覗かせて出迎えてくれるそう。その様子を想像するだけで悶えます。

猫の動線にももちろん配慮。寝室のドアには、猫の出入り用の扉をつくりました。初めて見つけた時から迷わず使ってくれているそう。リビングの窓辺にはキャットウォークもつくりました。

住み始めて数年が経つにも関わらず、物が少ないHさんの暮らし。「買うよりも捨てるほうが好き」「気に入ったモノが見つかるまでじっくりと時間をかけて探すタイプ」と自分について話すHさん。そんな自分の性格とライフスタイルを見極め、家づくりに徹底的に反映したからこそ、理想とした暮らしがキープできているのでしょう。

H邸の、簡単にキレイを保ちやすい工夫は、お掃除&片付け嫌いでなくとも参考になるものばかり。すっきり整う暮らしの秘訣は、家づくりにあり。オーダーメイドのリノベーションだからこそ叶えられた「自分と猫に快適な暮らし」がそこにはありました。

※こちらの事例はimageboxでも詳細をご確認いただけます。

EcoDeco(株式会社Style&Deco)/ エコデコ

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テキスト:サトウ

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