古いものがお好きなYさん夫婦が購入した築50年のマンション。ヴィンテージの家具が似合うような家にしたいとフルリノベーションしました。
ライフステージの変化を受け止められる余白を残しつつも、お二人の心揺さぶるものがたっぷりと詰め込まれた住まい。Instagramでたまたま写真をみた時にグッと引き込まれ、お話を伺いました。好きなものに囲まれたご機嫌な暮らしを覗いてみましょう。
大梁がヒントに。物量と開放感のバランス
都内の築50年のレトロマンション。スケルトン状態で物件を見たとき、3面採光と中心に通る大梁が印象的だったといいます。明るさと大きな梁を存分に生かした家づくりがはじまりました。
この抜け感を生かして、あまり仕切らずに風通しがよい明るい雰囲気にしたいという思いはありつつも、物が多いのである程度隠して収納できるようにしたいという要望があったといいます。
間取り計画のヒントになったのは、中央の大梁。空間を二分するこの梁を境に、パブリックとプライベートに大きく空間を分けることで、開放的にする部分と隠す部分のバランスをとったのです。
梁の左側はパブリックなスペースとして、リビングダイニングと土間(フリースペース)を配置。右側には、寝室、クローゼット、キッチン、水回りと、物量が増えやすいスペースを固めました。
左と右でゾーニングしつつも、明るく風通しの良い空間にしたいという要望通り、壁やドアで仕切ることはせず、アーチ状の開口でゆるやかにつなげています。
キッチンは中央に配置し、水回り、寝室、リビング、玄関側へと4方向に抜けられる動線を確保。仕切りがないので、風や光が南北に通り抜けて行きます。
開放的に好きなものを楽しむパブリックスペース
大梁の右側、パブリックスペースから見ていきましょう。
木の枠を設けた奥の土間はフリースペース。将来家族構成が変わったり、部屋が欲しくなった時のために、あえて用途を決めつけない空間をつくったのだそう。
アウトラインとなる木軸を用意しておくことで、壁をつくったり、カーテンや棚を取り付けてゆるく空間を分けたり。これくらいの余白があると妄想が広がりますね。
今は、デスクを持ってきて、ワークスペースにすることも。
木の枠はCDラックとして活躍中です。
土間は、モルタル左官で波模様にしごき、エポキシ厚塗りで仕上げているそう。「これは職人さん泣かせでした」とYさん。
ツヤ感や色むらを眺めていると、まさに波打ち際のよう……。手前のテラゾー風タイルも相まって、目線の先に海が続いているような気分にさせてくれます。
もしかして、と思っていたら「妻が“超”海好きなんです」とのこと。やっぱり!
土間にお魚さんが泳いでいました!実は他にも海の要素があるお家なんです。どこに隠れているか見つけてみてくださいね。
玄関は赤い壁が印象的!元気をくれるカラーで、出かける前の気持ちの切り替えにもなりそうです。
ダイニング・リビング側は、パーケットフローリング。学校を思い出させるレトロな飴色です。
たっぷり光が入って明るいリビング!窓を全開にしたら、風が通って気持ちがいいだろうなあ。
左手の窓枠の上には、棚を吊ってたくさんの本を収納。
よく奥の方をみると棚にエアコンが納まっていました!設備を違和感なく溶け込ませるアイデアです。
ソファからの眺め。アーチの先は寝室になっています。
空間をゆるく仕切るのは『シーチングカーテン』の生成り。「壁の塗装と色を合わせたい」と、色々探して辿り着いていただけたそうです。黄味がかったベージュに統一されて、落ち着いた雰囲気に。
窓には古いステンドグラスを飾っています。サッシにつけたフックで吊るして、窓に埋め込まれているような佇まいに。景色にアクセントをつけてくれますね。
空間の中心には『モルタル天板』を採用した作業台。「土間のモルタル仕上げやコンクリートの躯体現しと合わせて素材感がある天板を選びたかったんです」とYさん。
ダイニングテーブルとは別に設けられた作業台は、朝ごはんを食べたり、書き物をしたりと便利な場所になっているそうです。友人を呼んだ時も自然と人が集まりそう。
小上がりにすることで、空間をゆるく仕切り、パブリックとプライベートをつなぐ存在になっていますね。
作業台の端にはレコードプレーヤーとスピーカーをおいて音楽を楽しむ場所にも兼ねています。ニッチにCDやレコードも飾るように収納。ぴったりのサイズ感が気持ちいい!
テーマカラーで気分を変えるプライベート空間
大梁の右側、プライベートスペースも覗いてみましょう。
中央のアーチの先にあるキッチン。本体は予算の関係上システムキッチンに。
黄色好きのYさんは面材は黄色にしたいと思っていたそうですが、なかなか踏み切れていなかったそう。そんなとき、toolboxの『ラーチの吊り戸棚』のマスタード色がシステムキッチンの扉の色とうまくマッチすることを発見!それが決め手となり、2人が満足いく形でちょっとレトロな黄色いキッチンが生まれたんだとか。
キッチンと吊り戸棚の間には、『木製室内窓』の横長引き違いタイプを設置。サイズオーダーで「ラーチの吊り戸棚」と横幅をぴったり合わせています。
室内窓の向こうは寝室。窓に面した寝室から光をたっぷり取り込めます。キッチンで料理をしているときは、閉めておけば料理の匂いが寝室に届くこともありません。
ガラスは梨地を選び、視線は遮って。「ガラスも梨地がかわいくてとても気に入っています」とYさん。
そろそろ気づいた方もいるでしょうか?そう、このお家、スペースごとにテーマカラーがあるんです。
玄関はレッド、キッチンがイエロー、寝室がグリーン。トイレと浴室しか扉がないのですが、空間ごとに色を分けることで、視覚的に間仕切りをつくっているんです。
残す水回りは、そう、ブルー。
ブルーのタイル壁と床材が、海を思わせる洗面スペース。曲線的なシルエットのミラーや照明がゆらぐ水面を表しているようです。
どこか没入感があり、用がなくてもここにいたくなるような落ち着く空間。
よく見るとタイルに海を泳ぐようなお魚さん!自分がテンションが上がる場所って大事ですよね。
普段、脱衣スペースにはのれんをつけているそう。「ゆ」の文字が可愛らしく、温泉に入るようなワクワク感があります。
扉の先はトイレ。「トイレは海の中にいるようにしたかった」と、床・壁・天井と全方位がブルー!これまたこもってしまいそうな没入感。
壁付けの照明は『ミルクガラス照明』の楕円。「海の中から見上げた時のお日様のような丸くて淡い光がぴったりでした」とのこと。まさか太陽として採用してくださったとは!光栄です。
古いものと、海と、音楽と……。好きなものがたくさんあるYさん夫婦。いろんな写真を見せていただくと、ものの居場所や使い方が少しずつ変わっていて、日々工夫をしながら暮らしを楽しんでいる様子がわかります。
「まだまだ家具なども揃えたいですし、ライフステージの変化に対応できるように、造り付けすぎていない未完成の状態ですが、家を大きなおもちゃのように住みながらいじり続けていきたい」とYさん。
Yさん夫婦の空間を見ながら、いろんなアイデアに気づいたり、ワクワクするのは、Yさんが枠や固定概念にとらわれず、自由に家を捉えているからこそなんだろうなと思います。
「家は大きなおもちゃ」の言葉の通り、まさにおもちゃを手にした子どものように!
自分たちの好きなものをぎゅっと詰め込んだ空間は、まさにお2人の秘密基地。ワクワクする家づくりをこれからも楽しんでください!
(施工パートナー:ハウステック 市来)