「1階は親世帯、2・3階は子世帯が住む領域に。在宅勤務で日中家にいる機会が多いため、下階でも明るく、上階にはさまざまな居場所があり、その時々で仕事や勉強、くつろぐ場所を選べるようにしたい」

そんな要望を受けて完成した、どこにいても家族の気配を感じられ、自然の中に居場所を見出す感覚が家そのものになったような、自由な楽しさが詰まった住まいを今回はご紹介していきます!

外観の様子がこちら。2、3階にアクセスする屋外階段は1階寝室の屋根にそわせています。

敷地内がふたつの用途地域にまたがっていたため、制限がゆるい東側にボリュームを持たせ3階建てにして、西側の半分は、庭と駐車スペース、はみ出した平屋の寝室だけという構成に。下階は庭の景色を、上階は近隣の公園の緑や遠くの山並みを楽しめるようにしました。

まずは2・3階に当たる子世帯の住まいからご紹介していきます。

庭の雰囲気を内部まで引き込んだような設えの玄関。その脇には、外から帰ってきた時にさっと手を洗えるようにと手洗器が備え付けられています。

玄関からすぐの空間は書斎、その奥に畳敷きの小上がりが続きます。

玄関から眺めた逆向きの写真。小上がりの段差はちょうど腰掛けられる300mmに。

この小上がりは、実は1階の天井高の違いによって生まれたもので、そのまま2階の床レベルとして受け継ぎ段差を生かした設計にしたのだそう。

デスクに座って集中して作業をしたり、段差に腰掛けて本を読んだり、畳に寝転んでゴロゴロとくつろいだり。さまざまな暮らしのシーンが浮かび上がってくる空間です。

各部屋の床のレベルを変えながら積み上げられた、螺旋とスキップフロアの合わせ技のようなユニークな断面構成がこのお家の魅力。

書斎から小上がり、キッチンからダイニング、そしてテラスへと続く立体的なワンルーム空間。隣り合う空間の用途を考慮しながらプランを組み立てていかれたそう。それぞれの高さや方位によって異なる景色が楽しめます。

キッチンからダイニングへと続く空間。

大きな窓が設けられた明るいダイニングに自然と目が向く、ダイニングキッチン。

床レベルの変化や窓の配置、腰壁や収納などにより、ワンルーム的な作りながらも、キッチンの生活感が目立たないよう工夫。それにより、心地よい開放感と快適さが保たれています。

空間に馴染む家具のような佇まいのキッチンは、『木製システムキッチン』と『木製キッチンカウンター』の組み合わせ。

続いてダイニングからテラス方向を眺めると…目に飛び込んでくる、とっても気になる宙に浮いた箱!

このロフト、納戸という位置づけながら、まるでツリーハウスのような、子供たちの冒険心をくすぐる楽しげな雰囲気を放っています。こんなワクワクする空間、子供たちがほっとくわけがないですよね。彼らの絶好の遊び場にもなっているのだそう!

一日の始まりや終わり、ふと息をつきたい時に過ごせる穏やかな場所。

近隣の公園の緑や遠くの山並みの景色を楽しめるようにと、窓やテラスを設けて西側に大きく開いたつくりに。

続いてご紹介するのは、親世帯が暮らす1階。

「1階でも明るく」という施主の要望を叶えるために、天井高をあげて、空への抜けを持たせました。奥側の空間は天井を少し落とし、足元に窓を設けて庭を眺められるようにし、開放感を保ちながらも落ちついた雰囲気に。

エントランス脇に造作棚を設けて、面積を有効活用しながら空間をうまく仕切っています。

西側の高窓から光がたっぷり注がれます。

1階から3階まで貫く柱の周りに様々な空間が点在する作り。この柱は耐火上必要な鉄骨柱に耐火被覆と塗装を施したもので、この家の大黒柱として細いながら存在感を放っています。

丘を登りながら居心地の良い居場所を見つけて過ごすような、そんな気持ちよさを感じられる住まい。まるで幼い頃に読んだ絵本の一場面を思い起こさせるような、たまらなくワクワクする光景が広がっています。

日常の中にちょっとした冒険心や楽しさを呼び起こし、家族みんなが心地良い特別な時間を過ごすことができる、とっても素敵なお住まいの事例でした。

(写真提供:中山保寛)

倉林貴彦建築設計事務所

倉林貴彦が主催する設計事務所です。既成概念にとらわれずに自由な発想のもと、個々のライフスタイルに合った「自分らしく生きるための家」を提案します。
住宅から学校、福祉、宿泊、商業施設など、幅広い業務に対応し、日本各地において独創的で機能的な空間を創造しています。

担当:八

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