玄関を入ると、有孔ボードの間仕切り壁を境に、バルコニー側がスロープ、室内側が書斎になっています。壁でしっかりと間仕切ってしまうのではなく、床材を切り替えたり左右の壁の色を変えたりしてゾーニングすることで、明るさも開放感もどっちも確保。通路幅も十分にあるので日々の車椅子での移動も快適です。
平面図はこちら。玄関からバルコニーまではスロープが設置されているので、家族みんながバルコニーとの行き来がしやすくなっています。洗面室は回遊導線をつくることで行き止まりがなくなり、車椅子での移動もスムーズに。
これらアイデアを違和感なく、素敵な内装デザインの中に仕上げているのがこのお家。それでは細かく見ていきましょう。
スロープ側の有孔ボードは、本も、帽子も、腕時計も、お店のようにずらりと飾って収納ができちゃいます。時間に追われがちな朝の身支度の時間もついワクワクしてしまうような空間です。
グリーンの腰壁部分は黒板塗装。ちょっとしたメモ書きに使ったり、イラストボードとしてひとつの遊び場にもなりそうですね。
反対側、書斎スペースの腰壁はブルーで塗装しています。彩度を落とした落ち着いたカラーでぐっと集中しやすい空間に。
書斎側の有孔ボードにはデスク用品をコンパクトに収納、スロープ側にはお気に入りのコレクションをいっぱい並べて……と視覚的にも心理的にもオンオフの切り替えがしやすくなっています。
こちらの三角屋根のおうちを切り取ったような穴は、洗面室の出入口。
移動をスムーズにするためにドアをつける場所は最小限に。十分な通路幅を確保するために開口部は大きく。その分出入り口の形状はとっても自由なのでこういった形もできちゃいます。生活もしやすく見た目も自分好みに仕上げた素敵なアイデアの一つです。
洗面台は隣の棚板と素材を揃え、厚みを抑えて軽やかに仕上げることで、設備感が減り空間にまとまりが生まれています。下が空いていることで車椅子も入りやすく、かつ洗面室のようなコンパクトな空間も広く感じさせてくれます。
トイレも出入りしやすくスペースにゆとりを持たせています。天井、壁、床に異なるカラーを用いることで空間が間延びせず、引き締まった印象に。
書斎スペースを抜けた先には、木の温もりが感じられる天井のルーバーが印象的なリビング。実はこの天井、躯体へのビス打ち不可というマンション規約からダクトレールを設置するためにつくられたもの。問題解決だけでなく、空間にリズムと奥行きを生み出したグッドなアイデアです。
キッチンにはコンロスペースを囲うように『レトロエイジタイル』のブルーを貼り上げています。ツヤのある質感が窓の光を反射して奥行きを広く感じさせてくれます。
実用的にバリアフリーについて考えられている部分と、家族みんなが過ごしやすい間取りやデザインが考えられている部分がうまく調和した、他にはない、ひとつの暮らしが生まれていました。
自らの暮らしの譲れない条件、そもそもの建物の建築条件など、自分たちの過ごす居場所をひとつ作るのに考えなきゃいけないことは本当にたくさん。そんな時にこれはできないと諦めてしまうのではなく「じゃあこうしてみよう」「これってこうもできるんじゃない?」と各々の工夫が生まれてくることで家づくりってより面白いものになっていくんだろうなあと思うのです。
そんな家づくりを実現しているこのお家、これからも変わりゆく暮らしの中でどんな住まいに変化していくのか、とても楽しみです。
ゼロリノベ(株式会社グルーブエージェント)
「大人を自由にする住まい」をコンセプトに、家を買うことで自由になる「家のさがし方」「家のつくり方」を提案するリノベーション会社。
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