兄妹2人で住んでいる家の隣にあった自己所有の敷地面積86平米の空き地。ここに一人用の我が家を建てたい!という思いから、木村工務店が施工した建物を紹介する番組を見て、相談にこられたのが計画の始まりです。

道路に面した玄関側から反対側の裏庭まで続く、奥行きのある平屋。

まず初めに、お施主さんが施工することになったことの経緯を工務店さんに伺いました。

「実は最初からご自身で施工する、とか、これをやりたい、といった明確なプランがあったわけではありませんでした。ご提案の中でご要望を伺っていると、ここまでは作りこまなくていいのか、これはお客様が手を動かしながら答えを出していく方がいいのか、とやりたいことが具現化されていき、そして、辿り着いたのが、『自分でやる』という形でした。内装のこだわりよりも作り込みすぎない方が良い、自分で好きな空間を組み立てていきたい、といったつくることへの興味の方があったのかな。お施主さんが過去経験してきたというDIYの現場を見せてもらいながら、『かなりのDIY経験者だぞ!』ということも徐々に分かり、最終的にほとんどの施工はお施主さんが担当することになりました」

これまでもDIYをされたお客様もいたけど、ここまでご自身で施工したい!というお施主さんは初めてだったそう。

「それでも、お施主さんのやりたいことやできるスキルを踏まえ、お施主さんにどう渡すかが僕らの役割。お施主さんが施工をしやすいように箱の用意と下準備の計画を綿密にするだけ。だから心配は全然なくてむしろ完成が楽しみなくらいでしたね。」そう話す木村工務店のスタンスに、頼もしさとかっこよさを感じました。

全体の工期を、お施主さんの工事期間と工務店の工事期間とに区分けしながら進めていったという工事。実際に仕上がった空間を紹介しながら、お施主さん施工と工務店さん施工を見ていきます。

まずは玄関入ってすぐにあるキッチンスペースです。
天井は工務店が施工した木組みと構造用合板の現し、壁はお施主さんが自ら施工したラワン合板の仕上げです。
照明は『工業系レセップ』と『ソケットランプMETAL』を使用し、木のラフな内装にクリア電球の灯りが柔らかに照らします。

合板下地の施工、電気工事、キッチン排水の位置出しと接続を工務店が担当。タイル下地からタイル貼り、キッチンの設置、棚取り付けをお施主さんが担当。キッチンの天板は『オーダーキッチン天板』を採用いただき、天板下はお施主さんご自身でラワン材を必要サイズにカットし、組み立てています。工務店さんと一緒に計画した図面を見ながら、お施主さんが数量拾いから、材料の注文に至るまで全てを行いました。脚立などの大きな道具は工務店が用意し、インパクトドライバーやハケ、ローラーといったお施主さんが作業に使う道具や接着材などはお施主さんご自身のものを使用し、足りないものはホームセンターで揃えていたそう。

壁の板材の施工ももちろんお施主さん。

次に紹介するのはキッチンの奥に続く浴室・洗面・トイレスペースです。

ペーパーホルダーは壁面に一体化した『インセットホルダー』。

空間全体が真っ白なのが特徴的。
当初はユニットバスを計画してましたが、ひとりの空間だからドアはいらない、ということで、在来工法でバスタブを設置し、全面FRP防水を施しています。工務店が床壁天井全てを施工した唯一の空間が、こちらの浴室・洗面・トイレです。

畳やフローリングもお施主さんの施工。

洗面・風呂スペースの奥に進むとアクセントカラーが映える趣味部屋です。
塗装する場所のプラスターボードまでを工務店が施工し、お施主さんがパテ処理と『ベンジャミンムーア』を使って塗装をしています。2つの入り口の壁の色を紫とピンクで変え、気分によって居場所や使い分けができそうです。照明は落ち着いたヒノキの『ソケットランプ』を使用し、必要に応じて長さ調整ができるようになっています。

床は大工さん施工。床以外の仕上げはお施主さん施工。

最後に一番奥にある寝室です。
ヘッドボード側に位置する壁に貼り込んだ『クラシックリブパネル』はもちろん、天井に貼った『織物壁紙』もお施主さんが貼られたそう。天井のクロス貼りは、脚立を使って施工していくので足場が不安定になり難しいですが綺麗に施工されいてます。工務店さん曰く、お施主さんはミシンが趣味で布を扱った作業が上手で、クロスも器用に扱っていらっしゃったそうです。ちなみに、上棟式でも社名入りのジャンパーを製作して工務店のみんなにくれたそう。

玄関と反対側にある裏庭。お庭を照らす用の『ボールライト』がころっと。

最後に、工事を終えてみての感想を伺いました。

「とても楽しかったです。基本的には、お施主さんがYouTubeを見て勉強しながらやられていたので、そのスタンスを尊重しながら、僕らは見守りとお手伝いという感覚で何か困った時にフォローに入るくらいで向き合っていました。お施主さん工程の間も、現場まで近いこともあったので暇あればこんにちは!順調ですか?と様子を見に行き、そのときに困ってることがあればアドバイスしたり、現場の掃除などお施主さんの作業環境を快適になるように整えたり、大きいものが運ばれてくるときは一緒に運んだり。いつもは設計部の中にお客様が入る感覚ですが、今回は設計部だけでなく工事部にも入部した感覚で、一緒に作っていくやり方が、僕らも楽しかったです」

「お施主さんも工務店もみんな一緒になって混ざり合うプロセスって、いいですよね。建物の骨格となる構造、断熱や気密といった性能、空間構成を僕たちでしっかりと担保することで、お施主さんに自由な家づくりをお渡しできると思っています。」

そんな話を伺ってると、あらためて、家づくりのプロセスって大事だな、そう気付かされる事例でした。

ちなみに、お施主さんのご要望の1つに、「アレクサでほとんどの電気機器が操作できる家にしたい」ということも重要な要素にあったそう。家となるベースはとことんDIYして、暮らしは便利な機能も使いこなす。このギャップもまたありのままの自分の好みやこだわりに合わせた暮らしづくりの形で素敵だなと。これからどんな暮らしが始まっていくのか楽しみです。

株式会社木村工務店

大阪の工務店です。木村工務店の家づくりは、お客様と木村工務店の協働作業で行っています。
お客様の想いを最大限に反映させるために、何度も繰り返し、打ち合わせをすることを大事にしています。

紹介している商品

テキスト:小尾

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