敷地は横浜の住宅街、ご実家のお父様とお母様はともに大の庭仕事好きで、たくさんの植物が植えられています。お父様は日曜大工好きでもあり、お手製のウッドデッキが実家の庭に作られていました。

今回の新築計画で心掛けたのが、この元気いっぱいの庭をなるべく残すこと。そこで、建物を前面道路側に寄せ、フットプリントを小さくして3階建てにすることで、庭のスペースを確保しました。

建物の正面からは想像つかない緑の庭が広がります。

実家のウッドデッキに並ぶように新築側にもウッドデッキを設け、両家がつながり行き来できるようになりました。

3階建ての住まいの特徴は、真ん中のフロアに家族が集まるリビングが配置されていること。1つの大きな部屋の中に、キッチン、ダイニング、デスクスペース、大きな庭を眺めるくつろぎスペースが集約され、一緒に時間を過ごすのはもちろん、その場を共有しながらそれぞれの時間を過ごせるように計画されています。

定番の化粧板メラミン扉を使った『ユニキッチン』。高圧メラミンを採用しているため、マットな質感が空間に馴染みます。

白で統一されたキッチン空間。

キッチンと同じ面材でつくられた背面収納。

リビングやお庭を見渡しながら料理ができるキッチン。ものが外に出てても気にならないように、オープンキッチンにはせずに高めの腰壁をつくり、リビングから手元が見えないように工夫されています。またキッチン、背面カウンター、吊り戸は扉付きでたっぷりの収納量を確保し、さらに白に統一することですっきりとした印象のキッチンになっています。

道路側の窓まわりには広々としたデスクが設置されています。目の前に外の景色が広がることで、リビングの賑わいから少しだけ距離を取れ、自分の時間に集中できそうなスペースです。

庭側には大きな掃き出し窓を設け、ソファに座りながら子供たちが遊ぶ様子や植栽を眺めてのんびり過ごせるスペースになっています。そんなリビングをサンドウィッチして、上の階に子供部屋、下の階に寝室が配置されています。

一番上の階に位置する子供部屋。三角屋根の開放感と日差しがきもちいい空間です。キャスターがついた動く収納は、簡単に間取りを変えることができる動く間仕切りになっていて、子供の成長にあわせた間取りの変更はもちろん、模様替えで気分を変えたいときでもすぐに動かすことができます。

壁面に『フラットレセップ』。

子供部屋の入り口に洗面スペースが設けられています。斜め天井になっているので、明かりは壁面から照らします。

続いて下の階の寝室です。実は、こちらの寝室は半地下になってるんです。
道路と敷地に高低差があるため、道路側の高さに合わせた最下階はコンクリートの壁に囲まれ、庭の中にもぐるような半地下になっています。落ち着いて籠り感のある寝室ですが、地上部分に位置する場所に横長の窓を取り付けることで、日中は部屋の中に光が差し込むようになっています。

寝転んだ時に眩しくないようにメインの照明は天井ではなく壁に設け、天井にはスポットライトとして機能する照明『シーリングスポット』が1つだけ。明かりが灯された場所に、ちょっとした居場所ができています。

全てのフロアをつなぐ階段は抜け感のあるデザインで、階段の吹き抜けを通して部屋全体に明るさが広がり、圧迫感を感じさせません。

壁面に『フラットレセップ』。目立ちすぎずそっと寄り添う形ながら、小さな美しさがきりっと空間を引き立てます。

各階への場所の振り分け方、繋ぎ方を工夫することで、間仕切り壁が少なく、場所どうしや庭との心地よい関係が生まれました。ナチュラルな居心地が好きだというお施主様。コンパクトな中にものびやかな空間を重ねることで、理想的な外と内の暮らしを実現した素敵な住まいでした。

CHA

原﨑寛明と星野千絵の共同主宰による、横浜、川崎を拠点とする建築設計とデザインの事務所です。
住宅や商業施設などの建築設計、イベントの会場構成、コンサルティングをはじめ、インテリア、グラフィック、プロダクトのデザインなど、様々なプロジェクトに取り組んでいます。

テキスト:小尾

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